子育てをしていると、本当にいろんなことがあります。
反抗期、受験、進路……。
でも、22年の子育ての中で、私が一番長く戦った相手はそれらではありませんでした。
私が一番長く戦ったのは、長男による「お弁当箱の出し忘れ」です。

深夜のシンクに漂う、ドス黒くて重いオーラ

長男は小学3年生からソフトボールを始めました。
中学、高校でも野球部に所属。
つまり、小3から高校卒業まで、ずーーっと泥だらけのスポーツ少年だったのです。
特に高校時代は、野球部のハードな練習に加えて毎日のお弁当作り。
土日も遠征や部活があるため、私は朝早くからお弁当を持たせていました。
部活から帰ってきた長男に、
「お弁当箱出してね」
と言うのが、当時の私の日課でした。
「はーい」
返事だけは、いつでも立派なのです。
でも、待てど暮らせど出てこない。次の日も、その次の日も。
そして、こちらがすっかり忘れた頃。
台所の洗い場に、何だかドス黒くて重いオーラを漂わせたプラスチックの塊が、そっと、本当にそっと置かれているのです。
(……嫌な予感しかしない)
恐る恐るフタを開ける。
パカッ。
「……くさーーーーーーーい!!」
立ちこめる異次元の悪臭。
もはや、何が入っていたのか原型すら分からない謎の残飯、謎の粘り気。
せめて、フタを開けてくれ。
せめて、ゴミは捨ててくれ。
せめて、水につけておいてくれ……!!
私の心からの叫びが響き渡り、私が横で激怒しているというのに、長男はのんきにこう言います。
「あっ、ごめんごめん」
……その「ごめんごめん」で、すべての罪が許されると思っているのか。
これを何度繰り返したことか。一体、何個のお弁当箱をそのままゴミ箱へ葬ったことか。
そして私は、ついに思いました。
「もう、怒るの疲れたわ」と。

彩り? 映え? そんなことより「母の平和」

そこで私は、お弁当箱を「使い捨てパック」に変更しました。
持って行って、帰ってきたらそのままゴミ箱に捨てる。これでいい。
彩り? 映え? エコ?
そんなことより、「母の平和」。それが一番大事です(笑)。
何度言ってもできないなら、本人を変えようとするより、仕組みを変えてしまえばいい。
子育てをしていると、そんな「あきらめと工夫」も大切なんだと学びました。

あの10年戦争の結末と、母のツッコミ

そんな10年戦争を繰り広げた長男も、今では家を出て一人暮らしをしています。
そして、最近聞いた話では、なんとあいつ、自分でお弁当を作って職場に持って行っているらしいのです。
……え? あの長男が?
お弁当箱を一回も出さなかった、あの長男が!?
今は自分で作って、自分で食べて、自分で洗っている。
あんなに言ってもできなかったことも、親の手を離れたら、ちゃんと自分でやるようになる。
子どもって、親が思っているよりちゃんと育つんですね。
子育ての渦中にいると、「この子、このままで大丈夫なんかな」と絶望しそうになることがあります。
でも、ちゃんと自分で生きていく力は、少しずつ身についていくんだと思います。
……と、ちょっと感動の涙を流しかけていた私。
でも。ふと思い出しました。
我が家のモットー、なんだったっけ?
「人に優しく!」
……じゃろがーい!?
母にも、もうちょっと優しくしてくれ(笑)!
あの10年間、私がどれだけお弁当箱の悪臭と戦ったと思っているんだ。
……まあ、今、自分でお弁当を作って洗っているなら、それでよしとします(笑)。
【次回予告:第3話】
「守備よりヘリコプターに夢中だった日⚾️」
少年団に入ったばかりの我が子の初スタメン!
親のほうがドキドキしながら見守るグラウンドに、バラバラバラ……と1機のヘリコプターが近づいてきて!?
公式戦の真っ最中、白球ではなく空をロックオンした小1三男が巻き起こした、14年間のソフトボール生活の中でも、忘れられない、最高に愛おしい珍プレーのお話です。お楽しみに!