競技を行うとき、練習やトレーニングと同じように、栄養バランスのよい食事も大切です。
競技にはそれぞれ特性があり、必要なエネルギー量や栄養素、食事を摂るタイミングも異なります。
ここでは競技を大きく「筋力系」「持久力系」「瞬発力系」の3タイプに分け、それぞれに必要な食事の考え方を紹介します。
ただし、実際の競技は一つのタイプだけに当てはまるわけではありません。例えば、サッカーやバスケットボールでは、瞬発力だけでなく長時間動き続ける持久力も必要です。自分の競技や練習内容に合わせて参考にしてください。

競技特性によって異なる、必要な栄養素

まずは「何を食べるか」を考えてみましょう。

筋力系競技は、筋肉をつくるための栄養を十分に

ウエイトリフティングやパワーリフティングなど、瞬間的に大きな力を発揮する競技では、筋力を高めるための体づくりが重要です。
特に意識したいのがたんぱく質。肉、魚、大豆製品、乳製品などから摂りましょう。筋力トレーニングを行う人では、1日あたり体重1kgにつき1.4~2.0g程度が一つの目安となり、トレーニング量や目的によって調整します。
ただし、筋肉をつくるためには、たんぱく質だけでなく十分なエネルギーも必要です。食事量が不足すると、トレーニングのためのエネルギーや体の回復にも影響するため、主食もしっかり摂りましょう。

持久力系競技は、エネルギー不足と鉄不足に注意

マラソンや長距離走、トライアスロンなど、長時間運動を続ける競技では、エネルギー源となる糖質が重要です。
糖質は体内でグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられ、運動時のエネルギー源として利用されます。ごはん、パン、麺類、いも類、果物などから十分に摂りましょう。
また、持久力系競技では、鉄不足にも注意が必要です。鉄は酸素を運ぶヘモグロビンの材料となるため、不足すると競技パフォーマンスにも影響する可能性があります。赤身の肉、魚介類、大豆製品などを食事で取り入れましょう。

瞬発力系競技は、糖質とたんぱく質をバランスよく

短距離走や球技、ラケット競技では、瞬発的な動きとそれを繰り返すための持久力の両方が求められます。そのため、エネルギー源となる糖質と筋肉の修復・維持に必要なたんぱく質をバランスよく摂ることが大切です。
また、筋肉の動きに関わるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルも、日頃の食事から不足しないよう意識します。

競技タイプ別、食事を摂るタイミング

次に「いつ食べるか」を考えてみましょう。

筋力系競技は、1日の中でたんぱく質を分けて摂る

筋肉を効率よくつくるためには、1日を通してたんぱく質を摂ることが大切です。朝食を抜いたり、夕食だけにたんぱく質を集中させたりするのではなく、朝・昼・夕食それぞれで摂ります。また必要に応じて間食にも取り入れます。
牛乳やヨーグルト、卵、チーズなどは、手軽な補食にも活用できます。

持久力系競技は、運動前後の糖質補給を意識する

長時間の運動では、運動前に糖質を摂ってエネルギーを確保しておくことが大切です。
大会前には、運動量を調整しながら主食などの糖質を多めに摂り、筋肉や肝臓のグリコーゲンを蓄える「カーボローディング」を行う方法もあります。
運動後は糖質とたんぱく質を組み合わせて摂ることで、消費したエネルギーの回復と体の修復をサポートできます。おにぎり+牛乳・ヨーグルト、プロテイン+果物など、食べやすい組み合わせを用意しておくと便利です。

瞬発力系競技は、試合の合間にもエネルギー補給を

試合時間が長い球技や、1日に複数の試合を行う場合は、試合の合間の補食も重要です。
試合前は、ごはんやパンなどの消化しやすい糖質を中心に摂り、試合の合間には、おにぎり、パン、バナナ、カステラ、ゼリー飲料など短時間で食べやすいものを活用します。
汗を多くかく場合は、水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質も補給できるスポーツドリンクもよいでしょう。

筋力・体づくりでは、たんぱく質だけに偏らない

筋肉を増やしたいと考えると、たんぱく質を摂ることばかりに注目しがちです。しかし、筋肉をつくるためには、十分なエネルギーも必要です。
トレーニング前は、主食・主菜・副菜をそろえ、消化に配慮した食事を摂りましょう。トレーニング後はたんぱく質と糖質を組み合わせることで、筋肉の修復やグリコーゲンの回復をサポートします。
また、体を支える骨を丈夫に保つためには、カルシウムやビタミンDも大切です。乳製品、小魚、鮭、卵、きのこ類などを日々の食事に取り入れましょう。

どの競技にも共通する、毎日の食事

競技に合わせた食事を考えることは大切ですが、その土台となるのは毎日の食事です。
基本は、朝・昼・夕食で「主食・主菜・副菜」をそろえること。
主食は、ごはん、パン、麺類など。体を動かすエネルギー源になります。
主菜は、肉、魚、卵、大豆製品など。筋肉や血液、骨などの体をつくる材料になります。
副菜は、野菜、きのこ、海藻など。ビタミンやミネラル、食物繊維を補います。
さらに乳製品や果物も食事や間食に取り入れると、カルシウムやビタミン、糖質などを補いやすくなります。
水分補給も忘れてはいけません。特に長時間の運動や環境によっては、発汗量が増えるため、運動前からこまめに水分を摂り、運動中ものどの渇きだけを目安にせず、発汗量や気温、運動時間に応じて補給しましょう。

競技に合わせた食事を、できることから

毎日、理想的な食事を準備するのは簡単ではありません。
コンビニやスーパー、外食、遠征先でも「主食・主菜・副菜」を意識すると、食事を選びやすくなります。
例えば、おにぎりだけではなく、ゆで卵やサラダチキン、牛乳、ヨーグルトなどを組み合わせる。パンを選ぶときも、卵やチキンなどのたんぱく質が入ったものを選ぶ。
その場にあるものから、自分に必要なものを選べるようになることが、競技を長く続けるための食事につながります。
私自身、市民ランナーとしてフルマラソンに参加していた時期があります。
当時は「糖質が大切」という知識はありましたが、運動に伴う鉄不足や水分補給については、十分な知識がありませんでした。
そしてレース中、ゴールまであと2kmというところで、体調が悪くなり、歩いたり走ったりを繰り返しながら何とかゴールした経験があります。その後、運動と貧血について知り、自分の競技と必要な栄養についてもっと調べておけばよかったと感じました。
自分の競技の特性を知り、練習方法とともに食事についても知る。
それは、自分の体を支える一つの安心材料になると思います。