最初に買ったスケートボードは、チクタクができる前に折れた

30年前、私がスケートボードを始めたころは、続けられるかどうかも分かりませんでした。まわりに教えてくれる人もいません。
本物の道具が高いことだけは知っていました。だから、おもちゃ屋で3,000円くらいのセットを買いました。続くかも分からないものに、そこまでお金は出せなかったからです。
何回か練習しました。やっていたのはチクタク。ノーズを左右に振って前に進む、いちばん最初の動きです。
その動きに、板がついてきませんでした。チクタクができるようになる前に、トラックが折れました。
そのとき思ったことは、二つですね。
「高くても、本物がいるのかな?」
「どぶに金を捨てるって、こういうことか」

次に買った15,000円のコンプリートで、1ヶ月で滑れるようになった

そのあと、地元のスケートボードショップへ行きました。田舎なので、店は1軒だけです。
そこで買ったのが、15,000円のコンプリート。デッキもトラックもウィールも組み上がった、完成品の1台です。
使えた。というより、やっと練習ができるようになった。
1ヶ月ほどでチクタクができるようになり、同じころには普通に滑れるようにもなっていました。
ここまで来ると、楽しさは倍増します。そして、もっと良い道具が欲しくなりました。

30年でトラックは10個くらい替えた。それでもメーカーは4つだけ

30年で替えたトラックは、数えていませんが10個くらいだと思います。
でも、メーカーは4つだけです。ベンチャー、エース、サンダー、インディペンデント。
数の大半は、壊れて同じものを買い直したぶんでした。メーカーを乗り換えたのは、4回だけです。

1本目:ベンチャー ― 選んだのではなく、それしかなかった

近くの店は、その1軒だけでした。
並んでいたトラックに、Vのマークが入っていました。店員さんに聞くと、有名なメーカーだと教えてくれました。それで買ったのが、ベンチャーです。
正直なところ、当時の私は、ほかにどんなトラックがあるのかを知りませんでした。違いも分からない。ネットがないので、写真で見る機会すらなかったです。
そこから10年、5回くらい買い替えましたが、毎回ベンチャーからベンチャーへでした。ほかを知らなかったからです。
替える時期も「なんとなく」でした。目安にしていたのは、ネジ山です。ネジ山がダメになると、ウィールの交換がやりにくくなる。そうなったら替えどきでしたね。
あとは、キングピンが折れることもたまにありましたよ。

2本目:エース ― 近所にパークができた

そのころ私は30代前半。スケートボードにめちゃくちゃハマっていました。
だから、近所にパークができたときは、ワクワクが止まりませんでしたね。
Rに乗り始めて感じたのは、ストリートとはまるで違う、ということです。
なかでも忘れられないのが、幅の広いハーフパイプ(私のまわりでは「ハーフボール」と呼んでいました)でカービングをしている上手い人でした。自分も同じことがしたい。そう思いました。
でも、そのころ使っていたのは7.5インチのデッキです。ストリートのままのセッティングでは、あの動きは難しいと感じました。
ここでトラックをエースに替えました。そして、デッキも少しずつ太いものへ変わっていきます。

3本目:サンダー ― 友達の一言

そのパークで知り合った友達がいました。もとはBMXに乗っていて、スケートボードに切り替えた人です。
その友達が「サンダーはRに調子がいい」と言っていました。それで、次はサンダーにしました。2年ほど使いました。
いま振り返ると、このころから私は道具を「人から聞いた話」で選び始めています。店に1つしかなかった時代とは違い、まわりに滑る人がいて、話ができるようになっていましたよ。

4本目:インディペンデント ― 15年、同じものを選び続けた

パークができると、来る人も変わりました。都会の情報を持った人が、来るようになったのです。
なかに、名古屋のあたりから通っている人がいました。私と同じ年齢で、プロでした。
その人や、その周りの人と仲良くなりました。道具のこと、名古屋近辺のショップのこと。滑り方も教わりました。それまで手に入らなかった情報ばかりでした。
その人が使っていたのがインディペンデントです。だから私も替えました。
ここから15年。壊れるたびに、3回か4回、また同じインディペンデントを買いました。
このころにはもうネットがあります。調べようと思えば、いくらでも調べられましたが、それでも替えなかったのは、単純に調子が良かったからですね。ストリートでもRでも使えました。
最初の10年、ベンチャーを買い続けたのは「ほかを知らなかったから」でした。この15年は違います。知ったうえで、同じものを選び続けました。

40代半ば ― パークからストリートへ戻った

40代の半ばごろ、滑る場所がまた変わりました。
ひとつは年齢です。めちゃくちゃハマっていた時期が、終わりました。
もうひとつは、通っていたパークが無料から有料になったこと。
そして戻ったのが、河川敷のストリートでした。会社帰りに寄れて、無料で、手作りのセクションが置いてある場所です。

5本目:ふたたびエース

3ヶ月ほど前、インディペンデントを外しました。デッキに留めるボルトが通る穴が、楕円に広がっていたからです。
次に何を買うか。息子が「エースが調子いい」と言っていました。
それで、エースに戻しました。パークに通っていたころに使っていたのと、同じメーカーです。

トラックはどこから壊れるか

30年で10個くらい。ならすと3年に1個です。トラックは、壊れたら買い替えるものです。

ネジ山がダメになる ― 原因は道具ではなく、自分でした

初心者のころ、私はアクスルナットを締めすぎていました。
締めすぎると、ナットからシャフトの先が出て、むき出しになります。そのむき出しの部分が路面に当たって、ネジ山が潰れる。
ネジ山がダメになると、ウィールの交換がやりにくくなります。最初の10年、私はそうなったら替えどきだと思っていました。
いまは、アクスルナットでネジ山を隠す程度に締めています。締めすぎない。それだけで、ダメになりません。

キングピンが折れる

トラックの真ん中を通っている、太いボルトです。私のトラックは、これが折れることもたまにありました。

ベースプレートのネジ穴が楕円に広がる

これが一番わかりにくい壊れ方です。折れれば誰でも気づきますが、穴が広がるのはゆっくり進みます。気づかないまま乗り続けてしまう。

いまエースを選んでいる理由

いまはほぼストリートですが、調子がいいです。
特に、踏んだときに「ぐにゃ〜」と深く沈む感覚。あれが good です。曲がりやすくて、気持ちがいい。

デッキは「幅」と「キック」で選ぶ

幅は、滑る場所と一緒に動いてきた

始めたころは7.5インチ。パークに通うようになって8.5インチ、8.25インチ。そのあと9.0インチまでいきました。そしていま、ストリートに戻ってきて8.0インチです。
広ければいい、狭ければいい、ではありません。いま自分がどこで滑っているかで決まります。9.0インチまでいって8.0インチに戻ってきた私が言うのだから、間違いないと思います。

ブランドはキックで選んでいる

使ってきたのは、エレメント、アンタイヒーロー、リアル、クルキッド。このうちアンタイヒーロー、リアル、クルキッドはデラックス系です(エレメントは違います)。
系統は違うのに、この4つはキックがよく似ています。私はこの4つがオーリーをやりやすい、と断言できます。

ウィールは「どこで滑るか」で決まる

ボーンズの SPF は、パークでは最速だと感じました。
いま使っているのはスピットファイアの FORMULA FOUR、CONICAL FULL 54MM 101DU です。スピードは若干落ちますが、ストリートでは十分だと感じています。
大事なのは、速さの最大値ではありません。いま滑る場所に対して十分かどうかです。
これはウィールに限りません。ある程度の経験があれば、自分に合っているかどうかが、いちばん重要ですね。

息子に買ったのは1万円のコンプリート ― 私が見た4つのポイント

ただ、始めたばかりの人には、その「合っているかどうか」がまだ分かりません。息子たちがそうでした。
私の1台目は、3,000円で折れました。2台目は15,000円のコンプリートで、1ヶ月で滑れるようになりました。
息子2人がスケートを始めたとき、私が選んだのは1万円くらいのコンプリートです。
そのころにはもう長年やっていたので、使えるかどうかが分かりました。見たのは4つです。
  • デッキ:ある程度の弾きがあるか。弾いたときに鈍い音がしないか
  • ウィール:路面でストレスなく進むか
  • ベアリング:それなりに回るか
  • トラック:そこそこ曲がるか。耐久性がありそうか
ここにメーカー名は、ひとつも出てきません。
思えば、私が15,000円で買ったコンプリートも、付いていたトラックは無名でした。それでも1ヶ月で滑れるようになった。大事なのは有名かどうかではなく、ちゃんと使えるかどうかです。

まとめ:決め手はメーカーではなく「どこで滑っているか」と「そばにいた人」

30年やって分かったのは、全員に当てはまる正解のメーカーはない、ということです。
変わったのは道具ではありませんでした。滑る場所が、ストリートからパークへ、そしてまたストリートへ変わっただけです。
そしてもうひとつ。トラックを替えた4回とも、決めたのは人でした。
店員さんの「有名なメーカーですよ」。友達の「サンダーはRに調子がいい」。名古屋から通っていたプロが使っていたインディペンデント。そして息子の「エースが調子いい」。
30年間、カタログでもスペックでもなく、そのとき近くにいた人の一言で決めてきました。
続けてこられた理由は、ひとつではありません。
習慣。そして、諦めない心。
それから、25歳のときに一度やめています。1年くらいでした。そのあと「やっておけばよかった」と後悔しました。
仲間との関係が楽しい。とにかく楽しい。いまは運動になって、健康維持にもなっています。
いまは息子2人と、3人で滑りに行きます。最後に道具を決めてくれたのも、その息子でした。