プロ野球中継を観ていると、解説者がよく口にするノビのあるボール。

また、野球ゲームでは「ノビ」という特殊能力があり、
野球に興味がある人であれば、一度は聞いたことがあるのでないでしょうか?

ノビのあるボールを投げる投手で有名なのは、阪神で活躍した藤川球児投手や
巨人、そして、メジャーリーグでも活躍した上原浩治投手を思い浮かべる人が多いでしょう。

藤川投手のストレートは「火の玉」と呼ばれ、 ストレートと分かっていて打てないと言われました。

また、上原投手は、ストレートの球速は140キロ台とプロでは
速いといえないながらも、メジャーリーグの強打者を相手に
ストレートで三振を奪っていました。

藤川投手も上原投手もノビのあるストレートと
評されていましたが、このノビのあるボールとは
一体何なのでしょうか?

ノビのあるボールの正体

ノビのあるボールとは、一般的にホップ成分が高いボールのことを指します。

ホップ成分とは、上方向へのボールの変化量のことで、
0回転のボールに比べて何センチ上に到達したかを表したものです。

映像を観てみると、ノビのあるボールを投げる投手の
ボールは浮き上がっているように見えます。

ノビのあるボールは、打者の予測よりも上をボールが通過するため
空振りが取れたり、バットがボールの下に入り、
フライアウトが多くなったりします。

また、スピードガン表示よりも速いボールを
投げているのではないか?と感じることが多いです。

もちろん速いストレートを投げることも重要です。

しかし、160キロ近いストレートを投げてもノビがなければ、
簡単に打たれてしまうこともあります。

先ほど取り上げた藤川投手や上原投手は、
160キロのストレートは投げないですが、
ホップ成分が大きいボールで三振を量産していました。

藤川投手の時代には、正確な測定器がなかった時代でしたが、
50センチ以上のホップ成分があったと言われています。

プロのほとんどの投手の平均ホップ成分は40センチ強です。

つまり、投手として活躍するには、
球速だけでなく、ノビなどの球質も
重要であるということが分かります。

ノビのあるボールの原理

ノビのあるボールは、ホップ成分が高いボールと
いうことを説明しましたが、一体どういう原理なのでしょうか。

ホップするボールの原理には、
マグヌス効果が大きく影響しています。

マグヌス効果とは、
回転しながら進む物体の進行方向に対して、
上方向に力(揚力)が働くという物理現象です。

野球ではボールを投げると
通常バックスピンの回転をしながら進みます

マグヌス効果では、回転がかかれば、
かかるだけ揚力が働き、
ホップするノビのあるボールになるというわけです。

反対にフォークボールなどの回転数の
少ないボールはマグヌス効果の影響が小さくなり、
ボールがよく落ちるということになります。

近年は、トラックマンやホークアイといった
投球や打球を数値化できる技術が主流となり、
プロ野球中継でもスピード表示と共に回転数が
表示されることも増えてきました。

回転数とは、1分間にどれだけボールが
回転するかを測定したものです。

NPBの投手の場合、ストレートの平均回転数は
2200回転とされ、2400回転を超えると一流とされています。

先ほど取り上げた藤川投手のストレートは、
2700回転あったと言われています。

このことからもノビのあるボールを投げるには、
回転数が大きく影響していることが分かります。

ノビのあるボールを投げるポイント

近年は回転数がフィーチャーされることが多いですが、
回転数が多ければノビのあるボールになるかというと、
要素はそれだけではありません。

ノビのあるボール、つまり、マグヌス効果の
恩恵を受けるには、回転軸という要素も重要になります。

回転軸とは、ボールが回転する軸の角度のことです。

回転軸が水平方向に対して、垂直であるほど、
マグヌス効果によりホップ成分が大きくなります。

ノビのあるボールを投げるポイント

一方、傾きが大きくなるとシュート成分が大きくなります。

ノビのあるボールを投げるポイント

しかしながら、
ほとんどの投手が完全にきれいな回転軸の
ボールを投げているというわけではありません。

少なからずシュート回転しており、
利き手側に微妙に変化するボールを投げています。

変化球のシュートを投げる場合には、
シュート方向に投げようとしているため、
シュート方向に力強いボールを投げることができます。

しかし、ストレートがシュート回転しすぎる場合は、
意図しない方向にボールがいくため、
威力のないボールになってしまいます。

これが、ストレートがシュート回転していると
良くないと言われる由縁です。

同じ回転数でも回転軸の傾きが悪いと
マグヌス効果による揚力を十分受けられず
ホップ成分の少ないボールになってしまいます。

つまり、ノビのあるボールを投げるには、
回転数と回転軸という要素が重要になります。

ちなみによくある誤解として、
ノビのあるボールは初速と終速が少ないと思われがちです。

初速とは、ボールが手から離れた直後の球速のことで、
終速とは、キャッチャーミットにボールが届く直前の球速のことです。

スピードガンで表示される球速は初速の球速を表しています。

初速と終速の差が少ないほど、
打者の手元には速いボールが届くということになります。

ノビのあるボールは回転数が多いため、
空気抵抗を受けやすく打者の手元では減速。

つまり、ノビのあるボールは
初速と終速の差が大きいボールになりますが、
マグヌス効果によりホップ成分が大きいため、
浮き上がったようなボールに見えます。

ノビのあるボールを投げるには?トレーニング方法

ここまでノビのあるボールの正体である
マグヌス効果と回転数と回転軸について、
解説してきました。

実際にノビのあるボールを投げるには、
どのような練習方法があるのでしょうか?

回転数を上げるためには、
ボールを離すリリース時の指のかかり具合が
重要と言われています。
つまり、ボールの握りが重要です。

ボールの縫い目に対して、
人差し指と中指の間に指一本くらいの隙間を開けて
投げる人がほとんどですが、
藤川投手は人差し指と中指の隙間をなくして、
ボールを投げていました。

その方が一点に力が伝わり、
回転がかかったボールになるためです。

指先ではなく、指の腹に力が伝わってしまっていると、
回転数が悪くなるので、ボールの握り方や
指先に力がかかっているかを見直していきましょう。

また、ノビのあるボールを投げるには回転軸が重要であると説明しました。

つまり、シュート回転せずに
縦回転できれいなボールを投げることが重要です。

ボールがシュート回転してしまう要因として、
体の開きが早いということが挙げられます。

体の開きが早いことで、
体が横回転し、ボールがシュート回転してしまいます。

体の開きが早いのは、
左肩(左投げの場合、右肩)の開きと
踏み込んだ足の開きが早いことが主な原因です。

右投手であれば、
踏み出した左足が地面に着くタイミングで
左肩の前部分がキャッチャーに見えている場合は
肩の開きが早いと言えるでしょう。

また、踏み込んだ足が一塁方向に
傾いている場合も足が開いていると言えます。

体が開くことで、体が横回転し、
ボールにうまく力が伝わらず
シュート回転したボールになってしまいます。

きれいな回転軸のボールを投げるには、
体が開いていないかを意識しましょう。

最後に

ノビのあるボールについて、解説しましたが
いかがだったでしょうか?

投手として、活躍するには
ボールのスピードだけでなく、ボールの球質も
重要になってきます。

自分の理想のボールを追い求めるのには、
自分の体のことや投球スタイルも理解する必要があります。

自分にあった練習法で
自分の理想のボールを追及していきましょう。