少年野球では、技術を知っているだけでは子どもに伝わらないことがあります。「正しいことを言っているのに、なぜできないんだろう」と感じることは、私自身も指導する中で何度もありました。
そこで、教える内容だけでなく、練習の理由や伝え方、本人の感じ方まで考えるようになりました。
この記事では、私が実際に意識している教え方や声かけを紹介します。すべての子に当てはまる正解ではありませんが、次の練習で伝え方を見直す参考にしてください。
子ども扱いせず、一人の選手として向き合う
「なぜこの練習をするのか」まで伝える
私は、小学生だからといって「これをやれ」で終わらせないようにしています。一人の選手として話し、「なぜこの動きが必要なのか」までできるだけ説明します。
大人と同じ理解力や結果を求めるという意味ではありません。分からなくても質問しない子がいることも踏まえ、理由の説明を省かないということです。
例えば、練習の目的を伝えたあとに「今から何を意識してやってみる?」と聞く方法もあります。うなずいたかどうかだけでなく、本人が何に取り組もうとしているかを確かめられます。
自分の指導を見直し、新旧だけで判断しない
自分が子どものころに教わった方法や、昔からチームで続けている練習が、目の前の子に合うとは限りません。
練習の目的や改善したい点を説明できないときは、一度立ち止まって調べ直します。そのうえで、続けるか、やり方を変えるかを考えます。
JSPOの資料でも、同じ学年でも発育発達に大きな個人差があるとしています。また、指導者にはスポーツ医・科学に基づく知識と、相手に応じた伝え方が求められています。発育期のスポーツ活動ガイド、求められるスポーツ指導者像
新しい方法も同じです。動画やSNSで紹介された練習が有名選手に合っていても、今教えている子に必要とは限りません。新しいか古いかより、「何のために行うのか」「この子の課題に合っているか」で考えています。
技術指導は一度に1つへ絞る
一番直したいポイントから取り組む
フォームを見ると、足の使い方、手の位置、体重移動など、気になる部分はいくつもあります。それでも私は、一度に伝える技術的な課題を1つに絞ります。
今取り組むことをはっきりさせたいからです。まず1つに取り組み、できるようになってきたら次へ進むという順番を選んでいます。
「今日はこれを意識する」と本人が分かっている方が、練習にも取り組みやすいと感じています。次の動きを見るときも、まずは伝えた課題に取り組めているかを見ると、指摘が次々に増えるのを防げます。
「練習のための練習」になっていないか考える
避けたいのは、試合での動きを良くするために始めた練習が、そのメニューを上手にこなすこと自体を目的にしてしまうことです。
ある練習のために別の練習が必要になり、前段階の練習も増えるなら、「今、この子が優先してやることなのか」と考え直します。
段階を踏んで教える場合も、どのプレーにつなげたいのかは見失いたくありません。限られた時間で何をするか、実際のプレーにつながるかどうかを判断基準の1つにしています。
できている部分を伝えてから次の課題を示す
できていない部分だけを続けて指摘しないことも意識しています。例えば打撃なら、「上半身の動きはほぼ完璧。下半身も使えるようになったらもっと打てるよ」といった声かけです。
守備なら「ボールを捕るまでの動きはすごくいい。あとは送球が良くなればもっと完成度が上がるよ」と伝えます。
ただ、「下半身を使う」「送球を良くする」だけでは、次に何をすればよいか曖昧です。実際の動きに合わせ、良かった部分と次に意識する動きを1つずつ示すと、取り組む課題が具体的になります。
MuellerとDweckは、小学5年生の知能を褒める場合と努力を褒める場合を比較しました。失敗後の粘り強さなどに違いが見られています。ただし、少年野球や「褒めてから改善点を伝える順序」の効果を示した研究ではありません。研究について
私は「褒めれば伸びる」と考えるのではなく、できていることも本人に伝わるようにしたいと思っています。
子どもの感覚を聞き、自分でも考えてもらう
「違和感ない?」「どこがやりづらい?」と聞く
外からフォームを見ている指導者と、実際に体を動かしている本人では感じ方が違います。私は「このフォーム、なんか違和感ない?」「どこがやりづらい?」「今のは自分ではどうだった?」と聞くようにしています。
見た目には良くなっていても、本人には強い違和感がある場合があります。こちらが気になった部分を、本人はまったく意識していないこともあるため、外から見た情報と本人の感覚の両方を材料にします。
答えを急がず、分からなければ一緒に考える
「何が違ったと思う?」と先に聞くこともあります。答えを言わずに放置するのではなく、自分のプレーを振り返る時間を作るためです。分からなければ一緒に考え、必要ならヒントを出します。
JSPOも、選手に合わせて質問や提案などを使い分ける指導を紹介しています。自主性を尊重することは、すべてを本人任せにすることではありません。JSPOの指導者像・指導のアプローチ
フランスの柔道選手101人を対象とした研究もあり、報告された年齢は14~43歳でした。選手が感じるコーチの自律性支援と、自分で納得して取り組む動機づけに関連が見られています。因果関係や、小学生の少年野球での効果を保証する結果ではありません。Gilletらの研究
伝わらなければ教え方そのものを変える
分かりやすく説明したつもりでも、本人に伝わっていなければ伝え方を見直します。言葉を変える、見本を見せる、実際に動いてもらう、課題を簡単にするなど、反応を見ながら教える側も変えるようにしています。
「何度言ってもできない」と考える前に、「この伝え方で分かっているのか」と自分に問い直します。

自主練をしないことを責めず、本人の望む結果につなげる
練習が面倒な気持ちも理解する
自主練をしない子を見ると、「もっと練習すれば上手くなるのに」と思うことがあります。ただ、練習が面倒な気持ちも分かります。
そこで「練習しろ」と責め続けるより、少しやってみようと思えるきっかけを作ることを大切にしています。
例えば「素振りしなさい」だけでなく、「ホームラン打ったら気持ちよくない?」と声をかけることがあります。その先にある「もっと打ちたい」「試合で活躍したい」という気持ちにつなげるためです。
もちろん、本人が何を望んでいるかは聞く必要があります。大人が望む結果を押しつけるのではなく、本人が取り組みたくなる理由を一緒に探したいと考えています。
他の指導者が褒めていたことも本人に伝える
ほかの指導者が変化を褒めていたら、「監督がスイングめちゃくちゃ良くなったって言ってたよ」と伝えることもあります。
実際に聞いた評価を届けると、「ほかの指導者も見てくれている」と知ってもらえます。本人が練習の成果を実感するきっかけになると感じています。
技術的な失敗と、注意すべき行動を分ける
空振りやエラーを理由に感情をぶつけない
空振りした、エラーした、教えた動きができなかった。そうした技術的な失敗を理由に、感情をぶつける必要はないと思っています。
できないのであれば、「なぜできないんだ」と責めるより、何につまずいているのかを一緒に探します。教えたつもりになっていないか、課題が難しすぎないかも見直す対象です。
相手を傷つける行動には理由を伝えて注意する
一方で、チームメイトを傷つけたり、配慮を欠いたりする行動は、必要に応じて注意し、叱ります。技術の失敗を責めないことと、問題のある行動を見過ごすことは別だと考えています。
私は、感情をぶつける「怒る」と、なぜいけないのかを説明する「叱る」を分けています。ただし、相手を思う気持ちがあっても、暴言や威圧、人格否定が許されるわけではありません。
例えば仲間のミスをからかう場面なら、その行動を止めたうえで、何が相手を傷つけるのかを伝えます。子どもの言い分も聞き、次にどう接するかまで一緒に考える方法があります。
JSPOも、暴力やハラスメントを認めず、勝敗だけでなく上達や努力を重視する姿勢を示しています。発育期のスポーツ活動ガイド
まとめ|教えたかではなく、子どもに伝わったかを考える
少年野球の指導方法に、1つの正解があるとは思っていません。同じ声かけでも、伝わり方は子どもによって違います。
次の練習では、伝える課題を1つに絞り、試したあとに「今のは自分ではどうだった?」と聞いてみてください。
指導者が正しいことを言ったかだけでなく、目の前の子どもに伝わったか。教え方に迷ったとき、私はそこを一番大切にしています。