シュートが入らない日は、入るまで打つ。ドリブルでミスをした日は、その分だけ長く突く。真面目な人ほどこうなります。そして、量を増やしたのに手応えが変わらない時期が来ます。量を足す以外に打つ手はないのか、公的機関の指針と競技団体の指導ガイドライン、運動学習の論文を当たってみました。
1 活動時間には目安が引かれている
スポーツ庁と文化庁の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(令和4年12月)を見てみます。指導する側が理解しておくこととして、過度の練習が「スポーツ障害・外傷のリスクを高め、必ずしも体力・運動能力の向上につながらない」ことが挙げられています。中学校を主な対象とし、高校の部活動にも原則として適用される指針です。
活動時間の基準も示されていて、1日の活動時間は長くとも平日で2時間程度、学校の休業日で3時間程度、学期中の休養日は週2日以上とされています。基準づくりで参照された日本体育協会(現・日本スポーツ協会)の文献研究では、週あたりの活動時間の上限を16時間未満とすることが望ましいとされました。
この数字はケガやバーンアウトを防ぐ観点から引かれた線で、上達の効率を測ったものではありません。それでも、時間を足すこと自体が目的になっていないかを点検する目安にはなります。
なお、令和7年12月には文部科学省から新たなガイドラインが出ており、週当たりの活動時間の上限として11時間程度という数字が示されています。ここで挙げた16時間未満は、いずれのガイドラインでも参照されている文献研究の値です。
2 悪い癖がつく前に、問題を直してから打つ
日本バスケットボール協会の「U12カテゴリー指導ガイドライン」は、小学生年代を対象にした資料ですが、シュートについてこう書いています。悪い癖とは具体的に「左右に曲がる原因になるような動き」のことで、問題があるまま打ち続ければ、問題があるフォームが身体に染み込んでしまう。問題を是正して打ち続けることで、上質なスキルが身につく、と。
同じ資料は、まず近い距離での精度を求めています。NBAで歴代トップの3ポイント成功率を残したスティーブ・カー氏の「偉大な25フィートのシューターになりたければ、まずは偉大な4フィートのシューターになりなさい」という言葉が引かれています。そのうえで、10本打ったら7本以上、100本打ったら70本以上決めるところから始め、80%、90%を目指せるスキルを身につけることが将来の財産になる、としています。遠い距離から乱れたフォームで打ち続けることは、そこにはつながらないという指摘です。
入らないから本数を足す、という順番だと、直っていないフォームを重ねることになります。
3 直すポイントを一度に増やしすぎない
とはいえ、直したい点は次々に浮かびます。肘が開いている気がする、目線が下がっている気がする、足の向きも違うかもしれない。
この点に触れたバスケットボールの資料は見つけられず、理学療法の分野の論文で近い記述に行き当たりました。谷浩明氏の「練習が運動の獲得に与える影響」は、理学療法の立場から運動学習を整理したもので、課題が運動の場合には過度な言語化がその効果を減少させることもある、と述べています。挙げられているのはゴルフの想定例で、初心者に覚えきれないほどの注意事項を並べると、それまでさほど悪くなかったスイングをかえって悪くしてしまう、というものです。逆にプロが短い言葉で指導するのは、注意を散らさずに正確さの基準を与えているといえる、とも書かれています。
先のU12ガイドラインも、コーチに向けて、判断材料を詰め込みすぎないこと、そして1つできるようになってから2つに増やすことの2点を挙げています。こちらは状況判断の話ですが、一度に投げる材料を絞るという考え方は共通しています。自分で自分に出す指示も、同じように数を絞れそうです。
たとえば肘、目線、足の向きが同時に気になっているなら、その期間に見るのはどれか1つだけと決めて、残りは次に回す。順番はどれからでも構いませんが、決めた期間の途中で乗り換えないほうが、何を変えたから何が変わったのかを追えます。
4 反復だけで終わらせない
同じU12ガイドラインは、練習を反復・複合的練習・構造的練習・実戦的練習の4タイプに分けています。反復はドリブルやシュートを繰り返して覚える練習で、運動のメカニズムを神経に覚え込ませるもの。反復で同じ動きができるようになったら次は判断が必要になり、1対1から2対2、3対3と複合的な練習へ進む、という順番です。そのうえで、反復練習だけで終わらず、ゲームにつながる練習をしていくよう促しています。
ドリブルについても同じ考え方で、ボール操作と身体操作の掛け合わせであるとしたうえで、止まった状態でのハンドリング練習にも価値はあるが、いろいろな動きと一緒に練習することが重要だとしています。その場で突く練習を積んでも、そこで止めてしまえば試合の動きにはつながりにくい、ということです。
なお、練習の間隔については、先の谷氏の論文が集中法と分散法を比較した古典的研究を整理しています。休みを挟む分散法はその場のパフォーマンスでは優位ですが、学習効果ではほとんど差がない、というのがそこでの結論です。まとめて長時間やるより短く分けたほうが続けやすいのは確かですが、それは続けやすさの利点であって、覚えが良くなると言い切れるものではないようです。
痛みが出た日は、その日の分をやめてください。数日たっても引かない場合は、自己判断せずに医療機関に相談してください。
参照元
- スポーツ庁・文化庁「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(令和4年12月)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/1405720_00014.htm - 文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)
https://www.mext.go.jp/sports/content/20251222-spt_oripara-000046180_00234.pdf - 公益財団法人日本体育協会(現・公益財団法人日本スポーツ協会)「スポーツ医・科学の観点からのジュニア期におけるスポーツ活動時間について(文献研究)」(平成29年12月18日)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/12/20/1399653_01.pdf - 公益財団法人日本バスケットボール協会「U12カテゴリー指導ガイドライン」
https://u12.japanbasketball.jp/U12Guidelines - 谷浩明「練習が運動の獲得に与える影響」『理学療法のための運動生理』第9巻第3号123〜129頁(1994年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika1986/9/3/9_3_123/_article/-char/ja/