近年のバスケットボールでは、アウトサイドシュートの重要性が高まっている。
一般のプレーヤーでもミドルシュートやロングシュートが決まると気持ちいいものだ。
特に、リングに当たらずネットをくぐる、いわゆる「スウィッシュ」で決める感覚は最高である。
試合でこのようなシュートが打てれば、相手に与えるダメージも大きくなる。
今回は、バスケットボールにおけるジャンプシュートを決めるコツを、10年以上の実戦経験と20冊以上のバスケ技術本から得た知識から紹介していく。

シュートの3つの原則

バスケットボールのゴールは地面に対して水平に取り付けられているという特性がある。
さらに、ボールに対して前後左右10センチの余裕しかないリングに通す必要がある。
この事を踏まえて、バスケットボールにおいてシュートを決めるために必要な原則が以下の3つにまとめられる。

  • まっすぐ打つ
  • その距離に打つ
  • 高く打つ

この3つの原則を守り、再現性の高いフォームで打つことで、シュートの決定率を上げることができる。

真っ直ぐに打つ

真っ直ぐに打つということは、左右軸がぶれないこと。
左右にずれる理由は、ボールの持ち方やボールの持ち上げ方、手首の返し方などが原因となる。
手元ではわずかな差でも、遠くから打てば打つほど左右のずれは大きくなる。
例えば、3ポイントシュートの場合では手元で2度横にずれると、リングに到達する時には10センチ以上横にずれることとなる。
わずか2度の違いが、シュートが決まる・決まらないを左右することになる。

その距離に打つ

その距離に打つとは、前後軸のぶれがないこと。
遠くからのシュートであればあるほど、ボールに多くの力を加えないとリングまで届かない。
筋力の問題もあるが、力の伝え方を工夫することが必要となる。
また、近くからのシュートであれば、力を加減してちょうど良い距離に合わせていく技術も必要である。

高く打つ

高く打つとは、上下の軸を合わせること。
バスケットボールのリングは真上を向いているので、高い軌道を描くと入射角度が大きくなるためリングへ入る確率が上がる。
ただし、高い軌道を描けば描くほど、距離の調整が難しくなり、左右のずれが大きくなる。
ちょうど良い高さに再現性高く打つことが必要となる。

どのようにしたらこの3つの原則が効果的に守れるか。
そのコツを下半身と上半身の使い方に分けて紹介していく。

下半身の使い方のコツ

バスケットボールのシュートにおいて下半身の使い方は重要な要素となる。
下半身の使い方が7割りを占めると言ってもいいだろう。
下半身を安定させることにより左右のブレをなくし、遠くまでボールを飛ばすことが可能となる。

スタンスの取り方

シュートを打つ際の足の位置について。
肩幅程度に開き、右利きであればゴールに対して右足を少し前にだすスタンスが理想的と考える。
若干半身に構えて、右足から右手まで1本の軸が通るようなイメージである。
こうすることによって、シュートを打った際にボールが真っ直ぐ飛ぶようになる。
ゴールに対して両足を平行に構えても問題ないが、身体の軸を通すためには若干半身に構えるほうがよいだろう。

膝の曲げ方

遠くまでボールを飛ばそうとするには、膝の曲げ伸ばしが不可欠である。
しかしながら、膝を深く曲げれば良いというわけではない。
膝を深く曲げすぎると余計な力が入り、かえって飛距離は伸びない。
さらに、シュートを打つまでの時間がかかってしまうため、ディフェンスにブロックされやすくなる。
シュートを打つときには自分で意識している以上に膝は曲がっているものである。
10度~20度くらいの意識で、あまり曲げすぎない意識を持った方がよいだろう。
続いて、どのように曲げたらよいかについてのポイント。
膝を曲げるという意識よりは、お尻を落とすというイメージを持った方が良い。
膝を曲げる意識を持ちすぎると、膝が前に出てしまい故障の原因となる。
お尻を落とすイメージを持ち、太ももの裏の筋肉(ハムストリング)を使うことによって飛距離のアップに繋がるだろう。

ステップの踏み方

シュートを打つ際に、その場で止まった状態で打つということは少ないだろう。
動いた状態からストップしてシュートの動作に移ることになる。
パスを受けてミートした後、もしくはドリブルを止めてボールを持った後にステップを踏んでストップし、シュートを打つことになる。

その際、大きく分けて以下の2つのステップに分類される。

  • 片足ずつ1歩目、2歩目とステップを踏む
  • 両足同時にステップを踏む

片足ずつ1歩目、2歩目とステップを踏む場合

右利きの場合、右側へ動きながらシュートを打つときには、1歩目で左足、2歩目で右足を着くとシュートが打ちやすいだろう。
これは、おそらく無意識で行うとこのような動きになっているはずだ。
このステップを踏むことで、身体は反時計回りに回転することになり、右手でのシュートはスムーズに行うことができる。

ステップの踏み方

では左に動きながらシュートを打つ場合はどうだろうか。
1歩目で右足、2歩目で左足とした方が動きからの流れはスムーズに行える。
しかし、このステップだと体は時計回りに回転した状態となるので、右手のシュートの場合はこの動きに反発することになる。

ステップの踏み方

一方で、1歩目で左足、2歩目で右足とした場合は、動きの流れには反することになる。
しかし、左足で踏ん張ってステップを踏むことによってその後のシュートにはスムーズに移行することができる。
踏ん張ったその反発を力に変えてシュートにつなげることで、飛距離も伸びるだろう。

ステップの踏み方

両足同時にステップを踏む場合
正面からボールを受けてそのままシュートを打つという、いわゆるキャッチ&シュートの場合には、両足同時にステップを踏むことが効果的である。
両足同時にステップを踏むことで、地面からの反発を力に変えてシュートを打つことができる。
また、リズムが生まれることによって良いシュートの再現性が高まるだろう。
左側に動きながらのシュートの場合も、1歩目、2歩目とステップを踏むのではなく両足同時にステップを踏んだ方が良い感覚を得られることもある。
状況に応じて、ステップの踏み方を試してみるとよいだろう。

上半身の使い方のコツ

バスケットボールのシュートにおいて上半身の使い方は、最後の微調整になる。
下半身で蓄えた力を上手く上半身に活かすことによって、真っすぐ、遠くに、高くボールを飛ばすことができる。

姿勢のとり方

上半身の姿勢のとり方は、体幹を意識して上体を反らないように注意する必要がある。
身体が反って後傾になると、下半身で蓄えた力が後ろに抜けてしまいボールに力が伝わらなくなる。
腹筋や背筋を意識して、下半身の力を真上に伝えることを意識すると、腕に力を加えなくてもボールの飛距離を伸ばすことができる。
特に、ロングシュートの際に力が入ってしまうと上体が反ってしまうことが多いので、なるべく力まないように心がけると良いだろう。

姿勢のとり方

ボールの持ち方

パスを受けてボールを持ったタイミング、ドリブルを止めたタイミングで、シュートが打てるようなボールの持ち方をしている必要がある。
その際のボールを持つ、シューティングハンドの持ち方はどのようにすればよいだろうか。
多くの人は指先の腹の部分でボールを持ち、手のひらの部分には空間を開けているだろう。
しかし、手のひらの部分をボールに触れながらシュートを打ったほうがコントロールしやすくなる。

ボールの持ち方

これはボールに触れる部分が多いほど、ボールから得られる感覚が多く得られるためである。
この点については個人差があり、熟練したプレーヤーであれば指先だけの感覚でコントロールすることも可能であるだろう。
シュートの感覚が悪いと感じたときは、一度手のひらの部分を触れながらシュートを行ってみることをお勧めする。

リフトアップのやり方

ボールを持ってから、シュートをリリースするポイント(おでこあたり)に持ち上げていく動作をリフトアップという。
この動作は、下半身からの力をボールに伝えるための重要な動作となる。
このリフトアップの開始位置をどこにしたらよいであろうか。
ひと昔前のプレーヤーであれば、「ボールは下げない」と教わったことがあると思われる。
現代でもインサイドでのシュートであれば、スティールされるリスクが高まるのでボールは下げない方が良い。
しかし、アウトサイドのシュートの場合には、ボールを一度下げた方が飛距離が伸びやすくなる。
これも個人差はあるが、おへそのあたりに一度ボールを保持してからリフトアップを始めるとよい。
ただし、リフトアップの距離が長ければ飛距離が出るという訳でもない。
肘を伸ばした状態のほうがリリースポイントまでの距離が長く勢いがつきそうであるが、余計な力が入ってしまい思いのほか飛距離が伸びない。
適度に肘を曲げた状態で、おへそあたりにボールを収めるとよいだろう。

リフトアップのやり方

この状態から、リングに向かって真っすぐ肘を伸ばしていくことで、下半身の力が伝わり左右のぶれも少なくすることができる。
肘の向きがリングに向いているということがポイントになる。

リリースのやり方

シュートの最後のボールを放つ動作である。
ここで最後の微調整を行うことになる。
リフトアップで持ち上げたボールを、真っすぐリングの方向に向かって手首を返す。
手首を真っすぐ返す必要があるが、右利きの場合は身体の構造上左側(内側)に返ってしまうことがある。
この矯正として、やや右側(外側)に返すことを意識するとよいだろう。
また、最後にボールを触れる指(シューティングフィンガー)については、あらかじめ自分で決めておいた方が良い。
可能性があるのは、中指か人差し指と中指の2本になるかと思われる。
これはどちらが良いということはなく、自分が一番よいフォームの時にどちらの指が最後に触れているかを確認しておくとよいだろう。
そのうえでシュートを打つときに、理想の指でボールを放てているかをチェックするようにするとよいだろう。
最後に、シュートを打った後のフォロースルーは残していたほうがよい。
特にシュート練習の際には、外れたときの原因を突き止めるのに役立つこととなる。
シュートの感覚もフォロースルーを残しておいた方が残りやすく、フォームの修正や再現に繋がるはずである。

まとめ

バスケットボールにおいてシュートを決めるには、理想的なフォームかつ自分自身にあったフォームを再現性高く行えることが重要である。 シュートの感覚は人それぞれであるため正解があるわけではない。 上記で述べたコツは、一般論と私が感じている感覚をもとに紹介したものである。 少しの感覚の違いが、シュート決定率の大きな違いになってくることも珍しくない。 これらのコツを踏まえて、自分自身にあったシュートフォームを見つけ、再現できるよう反復練習をし、身体にしみ込ませることが必要となる。

【参考文献】

  • 『バスケットボール シュートは理論でうまくなる!!』鈴木良和 著
  • 『バスケットボールの教科書〈1〉 技術を再定義する』鈴木良和 著
  • 『バスケットボール ロバストシューティング』鈴木良和 著
  • 『バスケットボールの新しい教科書 実戦力が高まる「オフェンスルール」』磯ケ谷光明 著