はじめに
今、スランプで悩んでいる選手へ。
「練習しているのに、全然うまくいかない」
「前はできていたのに、急にできなくなった」
「前はできていたのに、急にできなくなった」
そんなふうに感じたことはないですか?
私自身も、高校最後のシーズンに、突然打てなくなった経験がありました。当時はかなり苦しかった。残り試合が減っていく中で、調子は戻らず、「このまま試合に出られないかもしれない」と、ずっと不安を抱えていた。
今振り返ると、あの時期があったから見えてきたこともたくさんある。だから今回、もしかしたら今スランプで悩んでいる人の何かの役に立つかもしれないと思い、この記事を書くことにしました。
スランプの中でも、「何もできない」わけじゃない。自分にできることを探して、ひとつずつ挑戦してみてほしい!その経験は、きっと何かにつながっていく。この記事が、今悩んでいる人にとって、少しでも力になればと思います。
第1章 突然、打てなくなった
高校3年生になり、打順が変わるまでは、私は1番バッターだった。とにかく塁に出ることだけを考えていた。ヒットの形は何でもよくて、バントでも、シングルヒットでも、ランニングホームランでも、塁に出られればそれでよかった。正直、バットを振れば、塁に出られる感覚があった。
でも、冬の練習が終わって春になった頃、バッティング練習でなんか変だなと思い始めた。「あれ、打てない?」最初は気のせいかなと思おうとした。でも練習を重ねるうちに、気のせいじゃないことがだんだんわかってきた。
タイミングがうまく合わなくて、振り遅れることもあったと思う。振っても振っても、ボールがバットの芯に当たらない。今まで普通にできてたことが、できなくなっていく。「なんで打てないんだろう···」「昨日までは大丈夫だったのに···」。そんなことを、練習のたびに考えていた。
高校3年生だった私には、もう時間があまり残っていなかった。引退までのカウントダウンは、待ってくれない。試合数がどんどん減っていくのに、調子はなかなか戻らなかった。周りは変わらず練習してるのに、自分だけ置いていかれてる気がした。
「このままで、試合に出られるのかな」
そんな不安が、日に日に大きくなっていった。焦れば焦るほど、バットが余計に振り遅れる気がした。頭ではわかってるのに、体がついてこない。モヤモヤしたまま、私は高校最後のシーズンを迎えようとしていた。
第2章 自分にできること
「打てないなら、どうすればいいんだろう」
そう考えたとき、私にはひとつ、自信を持っていたものがあった。それが足の速さだった。
小さい頃から、走ることが好きだった。小学生の頃はリレーの選手で、チームの中でも足が速いほうだった。顧問の先生も、私の足の速さは前から認めてくれていた。打つことで悩んでいた時期でも、これだけは変わらない自分の強みだった。
そんな時、副顧問の先生から「バント練習しよう」と声をかけられた。最初は正直、ピンとこなかった。でも言われてみて、確かに!と思った。打てないなら、バントで塁に出るという方法もある。自分の中で、何かがつながった気がした。
そこから、送りバントとセーフティーバントの両方を、繰り返し練習するようになった。送りバントは、とにかく確実に決めること。セーフティーバントは、三塁側に転がすことを意識した。たとえファールになってもいいから、相手が処理しにくいように、ボールの勢いを落とすことを意識していた。
練習を重ねながら、私はあることを考えるようになった。自分はホームランバッターじゃない。派手に長打を打つタイプでもない。だったら、自分にできることをやればいい!ヒットという形じゃなくても、塁に出ればいい!ランナーを送ることができれば、それでいい!それが、自分の役割なんじゃないかと思うようになった。
もともと練習していたセーフティーバントも、この時期はさらに力を入れて練習した。その結果、送りバントはもちろん、セーフティーバントも、狙った形で決められるようになっていった。
打てなくなったことで、自分を追い込んでいた。でも、「自分には何ができるんだろう」と考えたとき、足の速さという強みに気づけた。打つことだけがすべてじゃない。自分にしかできない役割がある。そう思えたことが、この時期の一番の変化だったと思う。
第3章 打撃だけじゃない。自分にできることを増やそう
絶対に試合に出たい。レギュラーから外れたくない。そんな気持ちが、この頃の私を動かしていた。
打撃の調整は、ずっと続けていた。構え方や振り方も、以前とは変えたところがあったと思う。顧問からも、たくさんアドバイスをもらった。細かいやり方までは正直はっきり覚えていないけど、とにかく色々試していた時期だったことは覚えている。
体づくりにもさらに力を入れた。筋トレや走り込みは、スランプになる前からやっていたことだった。でも、この時期はそれをもっと増やした。せっかく足の速さが自分の強みなら、それをもっと活かせる体にしたかった。それに、最後まで走り切れる、バテない体を作りたいという気持ちもあった。
正直、焦りもあった。打てないうえに、もし守備まで崩れたら、レギュラーを外されるかもしれない。そう思うと、怖かった。だから、「守備だけは絶対に落とさない」と、自分の中で強く意識するようになった。
積極的にボールに食らいつく。丁寧に、それでいて素早く処理する。誰よりも声を出す。仲間がミスをした時は、笑顔で励ます。守備の間、チームの雰囲気を悪くしないことも、自分の役割だと思っていた。
そうやって守備に取り組んでいるうちに、エラーもほとんどなく、確実にボールを処理することを意識していた。
そしてある時、顧問から言われた。
「〇〇の所にボールがいくと安心だ」
その一言が、すごく嬉しかった。打撃では悩んでいたけど、守備では、自分は信頼されている。そう感じられた瞬間だった。
打つことだけが、自分の役割じゃない。体づくりでも、守備でも、雰囲気づくりでも、自分にできることはたくさんある。そう思えるようになったのが、この時期だった。
第4章 スランプ中こそ、自分らしさを忘れない
小さい頃から、「いつもニコニコしてるね」と言われることが多かった。もともとよく笑うタイプで、それは無理して作った笑顔じゃなくて、素の自分だった。
スランプの間も、その部分だけは変えたくなかった。ベンチにいる時も、なるべく明るくいるようにした。試合で負けている時も、暗い顔はしないようにした。仲間にもできるだけ声をかけた。いつも通り明るくしていたかった。そう思っていた。
でも、正直に言うと、ずっと前向きだったわけじゃない。
悔しかった。みんなは普通に打っているのに、自分だけ打てない。それが悔しくて仕方なかった。仲間が結果を出しているのを見て、嬉しい気持ちもあったけど、同時に焦る気持ちもあった。「自分だけ置いていかれてる」って思う日もあった。笑いながら、心の中では全然笑えていない、そんな時間もあったと思う。
それでも、一人で抱え込まないようにはしていた。仲間と一緒に練習して、お互いに声を掛け合って、チームの中で普段通りに楽しく過ごしていた。一人だったら、たぶんもっとしんどかったと思う。
「いつ戻るかわからない。でも、絶対にまた打てる」
そう信じて、練習を続けるしかなかった。笑顔でいることは、悩んでいないことの証明じゃない。悔しさも焦りも抱えたまま、それでも自分らしさだけは失いたくなかった。それが、あの頃の自分だったと思う。
第5章 最後の打席は、空振り三振だった
引退試合より少し前くらいから、少しずつタイミングが合ってきた感覚があった。久しぶりにヒットが出た時は、「あ、少し打ててきたかも」と自分でも感じた。顧問からも、調子が戻ってきていることを言われるようになった。急に元に戻ったというより、少しずつ、という感じだった。
そして、最後の試合がきた。
それまでなら、塁に出るためにバントという選択肢もあった。でも、最後の打席で顧問から言われたのは、
「思いっきり振れ」
だった。
その言葉を聞いた時、信じてもらえてるんだと感じた。バントじゃなくて、自分のスイングを打たせてもらえる。それがすごく嬉しかった。
結果は、空振り三振だった。
正直、悔しかった。せっかく少しずつ打てるようになってきていたのに、最後の最後で三振で終わってしまった。でも、三振で終わったからといって、スランプを乗り越えられなかったわけじゃないと思っている。あの打席までに、自分にできることをずっと探してきた。バントを練習して、フォームを試して、体づくりをして、守備にも必死に取り組んで、仲間と一緒に練習してきた。その積み重ねがあったから、最後は「思いっきり振れ」と言ってもらえるところまで戻れたんだと思う。
最後の試合で「思いっきり振れ」と言ってもらえたことを思い出すと、スランプの時期に、もう一つ、顧問に信じてもらえていたと感じた出来事があった。
ある時、試合のあとに顧問から、「セーフティーバントのサインじゃなくて、打たせればよかった」と言われたことがある。
その言葉を聞いた時も、私のことを信じてくれていたんだと感じて、嬉しかった。
今振り返ると、あの時諦めないで最後までやり切ってよかったと思う。結果は三振だったけど、途中で投げ出さずに、できることを一つずつやってきた。その経験は、大人になった今も、自分の中にちゃんと残っている。
まとめ
今振り返っても、あの時期は本当に辛かった。試合に出られないこと自体が悪いわけじゃない。それはわかっている。でも、私にとっては、試合に出ることが何より楽しかった。だからこそ、あのスランプの時期は苦しかったし、諦めずに練習を続けてよかったと、今は思える。
あのスランプから、私が得たものがある。
諦めない!やればできる!できるようになるまで、とにかく粘る!
結果がどうなるかなんて、やっている最中はわからない。それでも、できることを探して、一つずつ積み重ねていく。そうすれば、何かしらの形で前に進める。そのことを、あの時期に教えてもらった気がする。
今、スランプの中にいる人がいたら伝えたい。
今は辛い時期だと思う。すぐに結果が出なくて、焦ったり、悔しかったりすると思う。もしかしたら、スランプになる前の状態には、戻れないかもしれない。それでも、諦めずにやり切ってほしい。
やらないで後悔するくらいなら、まずは、やり切ってほしい。
スランプ前の状態に戻れなくても、この経験はこれからも生きていくと思う。
私自身、あの時必死にもがいた経験は、大人になった今も、ちゃんと自分の中に残っている。だから、今苦しい思いをしている人にも、その経験はきっと、この先の自分を支えてくれると思う。