球速を上げたい、コントロールをよくしたいなら、投球のメカニズムを知ることが大切だ
メカニズムを理解して練習にのぞめば、間違いなく目標達成の近道となる
また、野球肘を防ぐためにも、メカニズムを知ること、そして、対策を行うことが大切だ
ここではピッチングのメカニズムと野球肘の防止方法を紹介する。

投球のメカニズムとは

投球でのエネルギー伝達は、「並進運動(へいしんうんどう)」と「回転運動」の2つの大きなメカニズムから成り立っている。つまり、投球で大事なことは、並進運動と回転運動を効率的に行い、リリースにつなげることだ
そして、それらは、体全体で行うことが重要で、決して、腕や手だけで投げてはいけない。

次の章から、それらの詳しい説明をしていく。

並進運動

ピッチングでの並進運動とは、ステップ動作、助走動作である。それは、投球する方向へエネルギーを伝える運動だ
ピッチングでは、並進運動から行われ、その後、回転運動につながっていく
並進運動の勢いのあるステップから、高速の骨盤の回転、さらに腕の振りへとつなげる動作、回転運動になっていく
ステップで大切なことは、開かずに進むことだ。体の回転は、着地後に行う必要があるので、体が開いた並進ではだめと言われている。理由は、エネルギーがロスするためだ
仕組みは単純で、右投手の場合、軸足の股関節をショートの反対の方向に引き込み、そのままステップすれば良いだけである。これが、お尻から前にだすという動作といわれている
軸足股関節を腰が開いてない状態、進行方向に背を向けた状態で、勢いよく進むことで、エネルギーが効率よく伝わるのだ。

参考

回転運動

並進運動の後は回転運動がメインになる。

回転運動の順番は、骨盤、体幹、両肩。
決して同時で行ってはいけない。
下半身から骨盤が回転し、体幹が回転、そして両肩が回転していくのだ。
この動作により、捻りでのエネルギーがまし、早い球を投げることができるようになる。

最初のポイントは、踏み出した後に着地した脚をすぐに固定することだ。
そして、その脚を支点として骨盤を回転させることだ
上半身の回転には、腕の振りが大切。
投球側の手はトップの位置のままで、グラブ側の肩を引き下げることがポイントと言われている。
上半身もひとかたまりに動くのではない。

回転運動のエネルギーを最大にするために、体幹の回転が始まる前には肘を背中側に引き寄せておくことが大切だ。
それにより、体幹の回転の遠心力が最大になり、ボールを高速でリリースができるようになる。
この際に大事なのは、腕は振るのではなく、「振られる」という意識だ。
もちろん、実際は腕を振る必要はあるが、きちんとした体の回転運動ができていれば、そのエネルギーで腕は自然と振られるようになる。
手投げのピッチャーは投げる手を前に出そうとして先に動いてしまう傾向がある。
腕を振ることばかり意識していると、スピードが出ないだけでなく、制球力が欠けてしまう。
腕は回転運動によって、振られるのだ。

参考:ピッチング動作のメカニズム

並進運動と回転運動をそれぞれ説明したが、どちらかだけできてもいけない。大事なことは、並進運動のエネルギーを回転運動に伝え、そしてリリースに伝えること。
そのためには、上半身、下半身、体幹をバランスよくトレーニングすることが大切だ。

全身を使う

最初にも書いたが、ピッチングは全身を使う動作だ。決して、肩と腕だけで投げるのでない。
ピッチングは、下半身からスタートして、体幹、肩、肘、手首を通じてボールを投げる動作である。
並進運動と回転運動も全身を使っていることを記載してきたが、ここでは、全身を使うさいのポイントを記載する。

  1. まっすぐに立つ
    まずは、軸足を安定してまっすぐに立つことから始まる。
  2. お尻から前にだす
    前にステップする際は、お尻から前にだすイメージである。軸足は、くの字を作るイメージで、軸足の親指に重心をのせる。
  3. 軸足の内モモを意識してステップ
    前足をステップするさい、後ろ足に重心をできるだけ残るようにする。前足の着地は遅らせることも大切だ。
  4. ひねりでパワーを蓄える
    前足に体重が移動するときに、投げる側の肘を背中のほうに上げ、肩も引き上げ体幹をひねる。これによりパワーが蓄えられる。
  5. 腰を回転させる
    下半身からのパワーを、前足のステップ、体幹部、そして腰の回転を起こす。
  6. 肩を回転させる
    腰の回転から肩の回転をさせ、そして肘が前に出ていく。これらにより、ひねりのパワーが伝わっていく。
  7. 肘から後に手首が出る
    上記パワーがさらに腕、肘、手首へと伝わっていく。
  8. リリース
    さらに、手首から指先へパワーを伝え、ボールをリリースする。
  9. フォロースルー
    腕を最後まで振り切る。そして、投げた後は、体重は前足に移り、軸足は蹴り上げた後に前にいく。

全身を使うためには、メカニズムをしったうえで、全身をバランスよくトレーニングすることが必須だ。

参考:ピッチャーは理解しておきたい!ピッチング動作の仕組みは?どのように力が伝わるの?

野球肘を防ぐためには

ここでは、野球少年に多く見られるのが「野球肘」の対策方法について記載する。

野球肘になる原因は、肘が下がった状態で、肩を回転させて投げるフォームにあると言われている。

したがって、野球肘を防ぐためには、投球フォームが正しくなるよう意識しておく必要がある。
具体的には、肘頭の高さ、向きを修正し、前腕の回旋を使ったフォームにする。

野球肘の心配がある人への修正方法として、まず指の向きを覚えさることから始める。
投球動作の後半、顔から前での手の動きのさい、小指側を前方にして、その後に親指が前へくるように腕を回転させる。
そして、ボールを投げたあとは小指側が上にくるようにする。

この動作ができるようになれば次は、実際に投げるような手の位置での動作を行います。
つまり、頭の上でボールを投げるような動作をさせて、その後ボールを払い落とすような動作をさせます。
そうすれば肘が上がり、肘頭が自然と前に向くようになる。
この動きの練習は実際に立って投げる必要はなく、座った状態で行ってもよいだろう。
また、実際にボールを投げる必要もない。
フォームを覚えさせることを優先すればよいのだ。

さらに、これらの動作を覚えることによって、野球肘の予防だけでなく、適切な回転運動ができるようになり、フォームの改善にもつながるだろう。

参考:投球動作指導

まとめ

ここでは、ピッチングのメカニズムとして、全身を使うこと、並進運動と回転運動の重要性、さらには、野球肘の防止方法について説明した。

ピッチングは、下半身からスタートして、体幹、肩、肘、手首を通じてボールを投げる動作である。全身を使った動作なのだ。
ピッチングは、並進運動と回転運動からなる。
並進運動は、助走動作である。ポイントは、体を開かずにお尻から前に出すこと。
回転運動は、骨盤、体幹、両肩の順に行い、ひねりのエネルギーをいかすことが重要。
そして、並進運動のエネルギーを回転運動につなげ、リリースをすることが大切である。

これらを実現するには、全身をバランスよくトレーニングする必要がある。

少年野球で多くみられる野球肘。
肘が下がった状態で、肩を回転させるフォームに原因があると言われている。
フォームを矯正することで、防ぐことができるので、しっかり矯正する必要がある。

ここに書かれたピッチングのメカニズムを理解して、練習をしてもらえば、上達の近道になるだろう。