ゴルフスイングについて、いろいろな方法や理論を雑誌やネットで見つけることができる。スイングで悩んでいるゴルファーはその方法や理論を試してみるうちに、迷路に入り込んでしまい、逆に調子を崩してしまうことも多くある。この記事では、どうすれば自分にあった方法や理論を身につけられるかどうかを紹介しよう。
記事やレッスン動画で紹介されている内容は正反対の場合もある
ゴルフ雑誌やレッスン動画を見ていると、紹介されている内容が記事によって正反対になっていて、どちらが正しいか悩んだことはないだろうか。まず具体例を紹介しよう。
ドライバーのテークバック
「アドレスで構えてからテークバックを開始するとき、ヘッドは30㎝程度真っすぐ引くと良い」と紹介されているものと、「円弧を描くようにテークバックしよう」と紹介されているものがある。アマチュアゴルファーの場合、どちらが良いのか迷ってしまうだろう。
スイングでは自然にクラブ軌道は円弧になっている。しかし、紹介されているような「真っすぐ引く」、「円弧を描くように引く」というのはゴルファーの感覚の違いのことを言っている。
例えばスライスがひどいゴルファーはアウトサイドインのスイングになっているので、円弧を描くような感覚を持つとアウトサイドインが改善される。一方、チーピンや右へのプッシュアウトが多い場合には、テークバックでインサイドに引きすぎているので真っすぐ引く感覚をもつとボールが安定する。
ドライバー、アドレスの体重の位置
スイングでは打つ前の構え(アドレス)がとても大事で、アドレスでスイングの半分以上が決まると言われている。そして多くの場合、アドレスでは体重の位置は真ん中にすると紹介されている。しかし、ゴルフ理論の中には左足体重で構える(左一軸打法と言われる理論)、逆に右足に6割を乗せるアドレスも紹介されている。
一般的にスイングをする場合、テークバックで右足に体重を乗せて、ダウンスイングで左足に体重を移動させることが理想とされている。しかし、テークバックで右足に体重移動がうまくできないゴルファーが多くいる。このような人はアドレスに右足に体重を乗せておくと、理想的なトップが作れる。
一方、ダウンスイングで左足に体重移動ができないため、ダフったり、手打ちになってしまうケースがある。最初から左足に体重を乗せておくことで、これらの問題が解決できる。
スイングで頭は動かさない
スイングでは頭を動かさないようにと思っているのではないか。実際にネットで調べると「頭を動かさないコツ」といったサイトが多くある。一方、「頭は動いても良い」と解説している記事もある。初心者の場合は頭が動きすぎることでスイングに影響が出るので、動かさない方が良いと言える。しかし、シニアや体が固い人が頭を動かさないようにすると、スイングが小さくなり飛距離が出ないし、手打ちになってしまう可能性も高くなる。
まったく同じスイングをしているプロはいない
プロゴルファーは自分にあったさまざまなスイングをしている。それはスイングを何万球も繰り返して身につけたものである。理屈だけでなく、自分の体と感覚から自分に適したものを見つけているのである。つまり同じことを言っているにも関わらず、人によって違うプロセスで自分なりのスイングに至った、ということを理解する必要がある。
ブライソン・デシャンボーのドライバーショット
ブライソン・デシャンボーはアドレスで腕とクラブが一直線になるように構えている。これによってスイングが大きな円弧となり、遠心力を最大限利用できる。飛距離を出すためのスイングを追求した結果、このスイングに行きついたのだ。
しかし、このスイングをするためには強靭な体幹と筋力が必要になるので、同じようなスイングをしているプロはあまり見かけない。また、デシャンボーのような打ち方でなくても、同じように飛ばすプロの選手は多くいる。つまり、体格、筋力、センスによってスイングは違ってくるのだ。
パターのグリップの握り方
パターの握り方には大きく3種類ある。最も一般的な逆オーバーラッピング、女子プロも多く採用しているクロスハンド、最近多くみられるようになったクローグリップの3つである。クロスハンドやクローグリップは、プロがより安定したパッティングができるように工夫をした結果、生まれてきたものだ。
アマチュアの場合、見渡す限り、ほとんどの人が一般的な逆オーバーラッピングで握っている。クロスハンドやクローグリップで握っている人はほとんど見かけないのが実情だ。握り方の解説は多くあるのに何故なのか。それはパッティングの感覚が掴めないではないだろうか。
プロゴルファーがやっている切り返しのタイミング
トップからダウンスイングに移る切り返しは、下半身から、というのが基本だ。では、下半身をどのように動かすのか、というポイントを聞くとプロによってさまざまだ。
右打ちの場合、左腰を斜め前方に動かすことでダウンスイングを始めるプロもいれば、左膝を外側に押し出すようにするプロもいる。また、トップで少し浮いた左足の踵を、地面に押し付けるようにすることでタイミングを取っているプロも多い。
プロはこの切り返しの方法を意識してやっているわけではない。練習をしている中で自然に身についてきたものだ。「切り返しは何を意識しているか」と聞かれて、「自分の場合はこうやっているのかな」と考えているのだ。
自分に適した方法の見つけ方
スイングに関する記事や動画は、基本的にプロやレッスンプロが紹介している。従って、書かれていることはすべて正しいといってよい。そのため、どのやり方が自分にあっているかどうかを見つけることがとても大切になる。具体的な見つけ方を紹介しよう。
レッスン記事で書かれている方法を実行しても、すぐにうまくいくとは限らない
年齢、体の固さ、筋力など個人で大きな差がある。例えば、フィニッシュでは左足にすべての体重を乗せることが理想と書かれていても、体が固いと左足に体重を乗せることは難しくなる。また女性の場合は男性に比べて股関節が柔らかいので、左足の内腿に、右足の内腿をつけるようにフィニッシュが取れるが、男性の場合はこれが難しい。
これを解決する方法として「アドレスで左足のつま先を開いておく」という技術も紹介されている。これを試してみると、今度は左に体が流れやすくなる、という弊害が出てくる。結果として、どうすれば良いかわからないというジレンマに陥ってしまう。
プロゴルファーや熱心なアマチュアは柔軟体操をして身体を柔らくするトレーニングをするだろう。しかし、アベレージゴルファーがどこまで柔軟体操を継続できるだろうか。レッスン記事に書かれていることを実行すれば、すぐにスイングが良くなることはない、ということを理解しておく必要がある。
自分の感覚に「しっくりくるスイング」を見つける
自分の感覚に「しっくりくる」とはどういうことなのか。クラブフェースの芯でボールをヒットする感覚と置き換えてもよい。 ボールを真っすぐ、そして飛距離を出すためには、クラブフェースの芯でボールを捕えなければならない。芯でボールを捉えると、力は必要なく自然にボールが飛んでいく、という感覚を経験した人も多いはずだ。
女子プロのヘッドスピードの平均は40m/s程度だが、平均飛距離は男性アマチュアより20~30ヤード飛ばす。これは彼女たちが芯を捉える率が高いからだ。これが男性アマチュアより非力な女子プロがボールを飛ばす要因である。
プロゴルファーの場合、最初はしっくり振れなくても、改善の理論がしっかりしていて、コーチもいて、練習量が多いのでしっくりくるように調整ができるが、練習量が少ないアマチュアの場合、芯にあたる感覚を探すほうが得策ということができる。
さまざまな方法が書かれているが、それぞれ試してみると芯に当たって気持ちよく振れるものと、どうしてもしっくりと振れないものがある。まず、しっくりくるものを見つけるようにしよう。
「しっくりくるスイング」の見つけ方
記事に書かれている方法をそのまま実施してはいけない。今まで自分がやってきた方法と書かれている方法の両方を試してもらいたい。どちらがフェースの芯に当たるかを試すのである。
具体的には10球を紹介されている方法で、次の10球を自分の今までの方法で打つ。これを5回繰り返す。その中でどちらがしっくりくるかを探してほしい。但し、自分の今までの打ち方は慣れているので、しっくりくる確率が高いかもしれない。そのときは打球の方向の安定性や飛距離も考慮してほしい。
また、これは1日だけではなく、何回も同じ練習で行うことで、どちらが自分に合っているかわかってくるはずである。こうすることで、いろいろとある情報の中でも迷うことなく、自分に適したスイングを作ることができるようになるはずだ。
スイングに関する情報はかなり多いが、万人に共通なものはなく、自分の体やセンスにあったスイングを見つけることが重要だということを理解してもらいたい。