少しのコツで上達することもあるゴルフ。このコラムでは「飛んで曲がらないドライバー」という誰もが目指す境地を、例に漏れず追い求めるサラリーマンが積み重ねたナレッジと若手プロゴルファーから得た知識をもとに上達法を解説していく。これからゴルフを始める方や、そこから更なる上達を目指している方はぜひ参考にしていただきたい。
まずは私の経歴から簡単に紹介する。
多くのサラリーマンがそうであるように、私もゴルフを始めたのは社会人になってからである。
学生時代に野球をやっていたので、始めたての頃こそやや順調ではあったものの、2~3年は100切りの壁を越えられない一般的な初心者だった。
ゴルフ歴としては現在約10年だが、週に1度程練習に行き、年間5~10ラウンド前後の頻度でたしなむ程度の、最もポピュラーなアマチュアゴルファー層と言っていいだろう。
そこまで熱中することもなく、有料のレッスンなどは全く興味が無かったので、今までお金を払ってゴルフを教えてもらった経験は一度もない。
しかし私は恵まれたことに、よく行く練習場で数人の若手プロゴルファーと親交を深めることができたのである。
そこから得られる情報は常に新鮮で、私にとってはクリティカルな知識ばかりだったので、ぜひそれらを多くの「最もポピュラーなアマチュアゴルファー層」にも届けたいと考え、この記事を執筆することにした。
どのようにボールが飛ぶのかをまず頭で理解する
クラブにボールが当たって反発し、飛んでいく。という、基礎的な一連の動作を改めて深く考えると見えてくるものがある。
ヘッドスピードが速ければ速いほど曲がりやすい
止まっている物体A(ボール)に対し、動いている物体B(クラブ)が衝突する際、BがAに与えるパワーはB(クラブ)のスピードが速いほど、大きな力が加わる。
これはごく当たり前の事で、恐らく簡単に想像できるはずだが、ここではその“力の加わる方向”(クラブの軌道)にクローズアップする。
それぞれの軌道でヒットした際、図のように回転を与える。
つまり、ヘッドスピードが速くなるとボールに与える横回転も増え、より大きく曲がってしまうという仕組みなのだ。
この仕組みを理解することで
- 意図せずに曲がってしまう場合はその原因究明に
- 逆に意図的に曲げたい時はこの仕組みを利用する
といったレベルアップに繋がる。
私の失敗談になるが、ゴルフを始めた当初このロジックを理解せずに、ひたすら飛距離を追い求めていた時期があった。
その時はスライスに悩んでおり、右手で無理やり捕まえようとすることでアウトサイドインの軌道となっていて、それがよりスライスを悪化させる要素であると気付いていなかったのだ。
このように良かれと思ってやっていることが実は悪影響をもたらすこともあるので、あらゆる要素において過信は禁物であると学んだ。
飛ばすには、ヘッドスピードの前にミート率
前述の通り残念ながら『ヘッドスピードに比例して、曲がるリスクも増大』してしまう。
これでは本記事で理想としている「飛んで曲がらない…」という目標に対し“彼方立てれば此方が立たぬ”状態である。
そこで重要になってくるのが「ミート率」というゴルフのショットにおける概念だ。
ミート率というのは、ボール初速をヘッドスピードで割った数値なのだが、この数値が高い方が、効率良くボールに力を伝えているということになる。
(例:ヘッドスピード50で打ったボールのスピードが70だとミート率は1.4となる)
分かりやすく言うと「どれだけ芯に当たったかを表す数値」と思っていただければ結構だ。
つまり、効率よくボールに力を伝えられていればちゃんと飛ぶという事実を理解することで、曲がるリスクを最小限に抑えつつ、最大限の飛距離を発揮できるスイングに近付くことができると言えるだろう。
「飛ばしたい=ヘッドスピードを上げる」ではなく、ある程度のミート率を維持できる範囲で、徐々にヘッドスピードの強化に取り組むことが肝要だ。
実際に効果的だった練習方法
私が日頃から実践している練習方法を【ミート率を上げる練習】【スイングスピードを上げる練習】という2つの軸で、それぞれ紹介する。
知人のプロゴルファーからもアドバイスを受けたものなので、それなりの根拠があると実感している。
ミート率を課題にした練習2選
1.当て感を養う練習
先ほど出てきた「ミート率」を最大化するためには、高い確率でクラブの芯にボールを当てる事が最優先事項である。
その「当て感」を身につけるために効果的だった練習をひとつ紹介する。
ドライバーを持ち、フルショットの半分以下の力でひたすらボールを打ち続けるというものだ。
最初はボールの行方やスタンスなど気にせずとにかく芯に当たる感覚を体で覚え、ある程度その感覚を掴んできたら、次に目標物(150ヤードの看板等)を決めてそこをひたすら狙う、といった要領で練習を行う。
「2球当たったら終わりにする」など目標を明確にすることも、その練習により意義を持たせるポイントになるのではないだろうか。
私の場合、どうしてもうまくいかない時はこれで200球以上打ったこともあった。
2.狙ったところに振り下ろす練習
インパクトの際、アドレスした時の位置にしっかりヘッドが戻ってくれば、理論上はフェイスの狙ったところにコンタクトさせることができるはずである。
(分かっていてもこれが一番難しいのだが・・・)
つまり【アドレス→テイクバック→トップ→切り返し→インパクト】という一連のスイングフェーズにおいて、アドレス以降で体のどこかにブレが生じてインパクトがズレるというのが、ミート率を下げる根本的な原因なのだ。
そこで私はいつも
- 1頭の位置(前傾確度)
- 2左腕(肘の曲がり)
の2点を、動画でチェックしている。
調子が悪い時はこのどちらかに原因がある事が大半なので、鏡があればスイングしながら確認できるがなかなかそうもいかないため、私はいつもスマホのカメラを使ってスイングチェックを行っている。
自分のスイングをフェーズごとに分解して「どこでブレが生じているのか、どこがブレやすいのか」を分析しながら練習を行うことで、クセのない理想的なスイングに近付く一歩となるのだ。
スイングスピードを上げる練習2選
1.様々なトップの位置を試す素振り
世界の一流プロゴルファーを比べても分かる通り、スイングは人それぞれだ。
それはなぜかというと、人によって骨格が違うため、捻転(ねじれ)の仕方も必然的に違いが出てくるのだ
この違いは「体の柔らかさ」に起因する所が大きい。
例えば硬さの違う2つのゴムを同じ力で捻ったとき、硬いゴムに比べ柔らかいゴムは大きく捻ることができる。
これと同じ原理で人間も、捻転できる範囲が人によって異なるため、インパクトの瞬間にヘッドスピードが最速となる捻転率も十人十色というわけだ。
つまり「インパクト時にMAXを持ってこれるトップはどこなのか」を、素振りで試すというのがこの練習の最大の目的である。
実際にボールを打って試すよりも、ヘッドの走りや風切り音を感じやすいため素振りがおすすめだが、簡易計測器をお持ちの方は数字で可視化するのが手っ取り早い。
2.右手は添えるだけ・・・
私がドライバーの飛距離UPを目指す上で、一番効果のあった練習がこれだ。
いつも通りアドレスし、右手(左打ちの方は左手)はほとんど添えるだけの状態にし、これで実際にボールを打つ。
クラブが飛ばないようにインパクト以降は少し右手も使うが、イメージはまさに「右手は添えるだけ」である。
これにより、腕の力に頼らずスイングすることができるので、この状態で飛ばすためには確実に体の捻転が必要になってくる。
さらに、トップで右腕の力が抜けることにより自然とヘッドに遅れが生まれ、これが「タメ」となり結果的に捻転を助ける動きになるので、手打ちスイングの脱却には最も効果のある練習と言える。
飛ばそうと思うと、どうしても一番力の入りやすい手や腕に余計な力が入ってしまう。
これが、ヘッドが走らない方の最も多い原因なので、是非一度試していただきたい。
(練習場で行う際には、クラブが手から離れないよう十分お気を付けください。)
最後に
私は野球少年だった頃から通算すると、20年以上もの間スイングスポーツをやってきた。
その中でたどり着いた答えは「スイングに正解は無い」ということだ。
身長・骨格の違いや、同じ人間でも筋肉量が変われば関節の可動域も変わる。
つまり、その人にとってのベストスイングは、それぞれ少しずつ変わってくるのだ。
特にゴルフは、できるだけベストに近い一定のスイングを可能な限り機械的に行う必要があるスポーツなので「自分のスイング」を見つけることが重要となる。
近年、多種多様な媒体から多くの情報を得ることができるため、ゴルフ上達のための情報も星の数ほどあるだろう。
「ネットの情報を鵜呑みにしてはいけない」と叫ばれるIT社会だが、ゴルフに関してだけは「とりあえず試してみて、合わなければやらなければいい」という軽い気持ちで鵜呑みにしながら、少しずつあなたの「ベストスイング」を追い求めるのもゴルフの楽しみ方のひとつかもしれない。