ゴルフとは常に判断が求められるスポーツである。
残り距離に対して、木や池といった障害物が立ちふさがったときにどう打てば良いのか、誰しもクラブ選択に迫られた経験はあるだろう。
私もゴルフを始めて30年以上経つが、今でも悩み、判断に迷うことは多い。
ただ、山岳から河川敷まで、さまざまなコースでの失敗から得たこともあった。
プロゴルファーやシングルゴルファーなど、プレー巧者との交流を経て、コースにおいての戦略も間近で学んできた。
この経験から、今回のタイトルである、クラブ選択に迷ったときの考え方についてアドバイスをしていきたい。

ケース1:フルショットできない微妙な距離

ケース1:フルショットできない微妙な距離

残り距離は、ピンまで155ヤード。
高低差はない。奥にOB、左右にガードバンカーが配置されている。
ふだんは、7番アイアンで150ヤードの距離を打てると仮定しよう。
はたして、この場合はどのクラブを選べばいいのだろうか。

プロゴルファーであれば、そこまで難しい問題ではない。
プロは、1つのクラブで20ヤードの距離を打ち分ける技術を持っている。
例えば9番アイアンの標準距離が150ヤードの場合、160ヤード(+10ヤード)、140ヤード(-10ヤード)と±10ヤードの範囲内での打ち分けが可能だからだ。
そのため、今回のケースならあまり悩まずに打てるだろう。

しかし、アマチュアで距離の打ち分けができる人はそれほど多くはいない。
この場合、考えられる選択肢は2つある。

ひとつめは、大きめのクラブ(6番アイアン)で打つ方法である。
6番アイアンであれば、距離に対して十分ピンを狙える。
ただ、ガードバンカーにつかまる可能性や飛びすぎによるOBのリスクを避けるため、スイングの仕方に注意が必要である。

曲げないためにはグリップをいつもより2〜3cmほど短く握り、スタンスを狭くとる。
8割程度のコンパクトなスイングで打てば、身体の捻転も浅くなり、距離を落としたショットが可能になる。
短く握ることでフェースも返しやすくなるため、ミート率も上がり、曲がらない球が打てるだろう。

ふたつめは、ナイスショットがでるかもしれないと考え、7番アイアンでフルショットを打つ方法だ。
これに関しては、あまり期待できない。
グリーンに届かせたいと、必要以上に力んでしまう可能性があるからだ。
力が入ることでスイングスピードが乱れてしまい、トップやダフリといったミスにつながってしまう。
ヘッドスピードの調節ができないうちはやめた方が良いと考える。
ピンの位置にもよるが、アベレージ90以上のゴルファーに「フルショットで届かせる」ことはおすすめできない。
このケースだと、大きめのクラブで打つことがベストな選択といえるだろう。

ケース2:バンカーのアゴを越えられるか

ケース2:バンカーのアゴを越えられるか

ドライバーでナイスショットを打てたと喜んだのも束の間。
意気揚々と2打目地点に向かうと、ボールがフェアウェイバンカーに入っている。
ドライバーの飛距離を期待していただけに、気落ちしてしまうパターンだ。
状況として、残り距離に対して必要なクラブで打つと、バンカーのアゴに当たる可能性がある。
このケースではどうすれば良いか。

クラブ選択に迷ったときは、アゴの高さとアゴまでの距離、それと傾斜の状態を把握してほしい。

アゴが高くなければ、フェアウェイウッドやユーティリティを使用しても問題ない。
逆にアゴが高い場合は、ショートアイアンで脱出に専念したほうが無難だ。
問題は、アゴの高さと距離の関係が把握しづらい場合である。

これは私の師匠に教わったことだが、アイアンのシャフトで角度を測る方法がある。
クラブのフェースを地面と平行にし、シャフトの傾きを見る。
シャフトの角度が、そのまま打ち出し角度とイコールになるという考え方である。
アゴに当たるかわからない場合は、この方法で角度を測れば、ひとつの目安となるだろう。

傾斜については、打ち出し角度を意識した判断をしたい。
フェアウェイバンカーはほとんどフラットな場所が多いが、傾斜があると打ち出し角度は変わる。
例えばライが左足下がりだと、打ち出し角度が低くなることで、弾道も低いままでてしまう。
低いとアゴに当たる可能性も増えるため、ひとつ下の番手で打つといった対策が必要になる。
そうすると、飛距離も望めない。
ライの傾斜もバンカー脱出には欠かせない判断材料になるので、十分注意したい。

バンカーの打ち方についても、あらためて確認しよう。
砂で足が少し沈むため、グリップをいつもより1〜2cmほど短く持ったほうが良い。
ボールの位置も普段より半個ほど右に置くことで、ダフりを防止できる。
スイングは、コンパクトなスイングを心掛けることでミート率があがり、脱出しやすくなる。

ケース3:障害物が立ちふさがった時

ケース3:障害物が立ちふさがった時

ピンは狙えるが、木や池、OBといった様々な障害物が目に入る。
まともに打つと高さが足りなくて木に当たる、ショートすると池に入る、少しでも曲がったらOBになるといった状況だ。
障害物を避け、スコアメイクするにはどのような戦略で望めばよいか。

どんな場面でも言えることだが、リスクはできるだけ避けたい。

木に当たると林に入るかもしれない。
池に入ると1ペナになる。
OBだと打ち直しをしなければならない。

このようなリスクを避けたいのであれば、クラブ選択の方向性は自ずと決まってくる。
木に当たらない高さのクラブ、池に届かないクラブ、曲がりが少ないクラブが選択肢に入ってくるだろう。

ちなみにライの状況にもよるだろうが、インテンショナルスライスやフックは、あまりおすすめしない。
人には持ち球があるため、よほどボールコントロールができないと失敗する可能性が高いからだ。
フェード系の人は、スライスを打つことに関しては感覚的にわかる。
だが、ドローやフックのイメージはしづらいはず。
ドロー系の人はその逆になる。

自分の思った以上に軌道を修正しないと狙った弾道はだせない。
遊びで練習するのは良いが、これを実践で使えるレベルまでもっていくには、相当量の練習が必要だ。

どうしても球を曲げたい場合は、理論として、次の打ち方をすれば効果はあるだろう。
スライスを打つ例として①フェースをオープンに構える②スタンスは目標方向より左を向く③ひとつ大きい番手のクラブで打つ。
シンプルとも思える3つの動作で意外とスライス回転はかかるものである。
ただ、狙った方向にいくかは保証できないので、クレームはなしでお願いしたい。

リスク回避だけがゴルフではない

リスク回避だけがゴルフではない

ゴルフにおいてリスク回避を優先すれば、スコアはそれほど悪くならない。
ただ、安全策ばかりだと楽しめないという意見もある。
さんざんリスク回避を述べておきながら言うのもなんだが、私もそれには同意だ。
3つのケースで述べたのはひとつの例でしかなく、状況により選択肢は増える。
ときには自分の実力を試す意味でも、大胆に攻めることも必要ではないだろうか。
打てるライなのか、狙ったところに打てるのか、ゴルフは常に判断力・見極める力が必要なスポーツだ。
攻めた結果ミスをしても、それは今後の練習テーマにもなる。
もし難しい状況をクリアできたら、それはまたひとつの財産になり、自信にもつながるだろう。