近年のハンドボールでは、全国トップレベルの選手たちを
みてみるとある共通した特徴が1つ浮かび上がる。
それは腕をしならせてハンドボールをプレーしていることだ。

筆者がまだ学生の頃は、腕をしならせてハンドボールを投げることは
主流ではなかった。ダーツを投げるような投げ方いわゆるアーム投げが基本であり
今もなおアーム投げを指導されることが多いと聞く。

ここでは近年のハンドボールのトレンドである腕をしならせる
トレーニング方法をわかりやすく解説する。
アーム投げから改善して一段階レベルアップを図ろう。

腕をしならせてハンドボールの投げる力を引き出す方法

腕のしなりの重要性とは

腕をしならせて投げることのメリットとしてシュート力の向上や
ボールの出どころがキーパーに見えづらいといったことがあげられる。

単に速いボールを投げられるだけでなく、しゃくりシュートやスピンシュートと
いったシュートバリエーションの習得にもつながっていく。

腕のしなりがアーム投げに比べてシュート力が違うのには2つのポイントがある。

  • 筋肉の伸張反射が使える
  • 運動連鎖がスムーズである

筋肉の伸張反射とは筋肉は引っ張られると縮む性質があり輪ゴムを
イメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。

運動連鎖は投げる時の力が脚から体幹、肩、腕、手首、指先と順に
伝わってくることである。アーム投げが木刀とするなら、しなりはムチのイメージだ。

2つのポイントを意識して腕のしなりを作ることは体全体の力がボールを
リリースする瞬間に一番強く働く。強くて速いシュートを打つには
腕のしなりの習得は必須だということがわかる。

腕をしならせるトレーニングの基本原則

正しい腕のしなりとは肘が前に出てボールが頭の後ろから出てくるフォームになる。

しかし中には筋肉の使い方を意識せずに見様見まねで間違った腕のしなりを
する人たちも見てきた。

腕のしなりを作るために意識することは

  • 肩関節が外側に回ること
  • 肩甲骨を寄せること
  • 胸を張ること

この3つの体の使い方を意識することが大事だ。

特に間違った腕のしなりをしている人に多いのは肩甲骨を寄せることと
胸を張って投げることができてないことが多いので注意したい。

どれか1つでも意識できてなかったら腕のしなりのフォームは崩れてしまい
肘や肩に負担がかかるためケガや故障にもつながるので気を付けよう。

ハンドボールで腕のしなりを習得するトレーニング方法

腕のしなりを出す大前提にハンドボールを握る力がなければ腕を
しならせることは不可能である。

腕をしならせる投げ方に慣れるまでは3号球なら2号球、2号球なら1号球と
自分が普段使っているボールよりも一回り小さいボールでボールを掴みながら
トレーニングするといい。

一回り小さいボールがなければ、極端に空気を抜いたボールを
用意してトレーニングに取り組もう。

ボールを使ったトレーニングを5つ紹介する。

1.両手でバウンドパス

両手でボールを背中につけ、全身を使って地面にたたきつけてパスを出す。

背中にボールがつくと肘が最高到達点になると同時に
胸を張る、肩甲骨を寄せる動作が自然と身につく。

ボールは頭の後ろから出る感覚もわかるトレーニングとなっている。

2.両手でチェストパス

チェストパスとはバスケットボールでよくみる胸の位置から
手首と外に指を返してパスをすることをいう。

手首と指に力を入れる感覚はボールをリリースする際に
運動連鎖がスムーズに伝わっているかが重要になってくる。

3.両手で真下にバウンドパス

1と2を合わせたトレーニング方法になる。
]肘が伸びた状態で真下にバウンドさせる、いわゆる最高到達点で
ボールをリリースする。その際に手首と指を外に返すことを意識すること。

またキャッチしたボールを地面につけてから背中に
もっていくように行うことだ。

背中の曲げと反りが生まれ、筋肉の伸張反射と運動連鎖につながる効果も生まれる。

4.片手で真下にバウンドパス

3のトレーニング方法でボールをリリースする際に片手で行うこと。
片手では腕を振り切ってリリースせずに最高到達点より
腕をやや前で止めるイメージで行うのがいい。

両手でトレーニングしたことを意識して片手でもできるようになるのが大事である。

5.片手でボールを頭の後ろで円を描いてからバウンドパス

ボールを非利き手側の肩甲骨に近づけて頭の後ろで円を描くこと。
リリースする際は最高到達点で投げバウンドさせる。

頭の後ろで円を滑らかに描いて行うことで各関節の連動性を高める効果が生まれる。

紹介した1から5のボールを使ったトレーニングはすべてつながっているため
順序を守って行っていくこと。

重要なのはトレーニングすべてバウンドパスでやることだ。
至近距離の対面パスのダイレクトパスはコントロール力を重視するあまり
腕を思い切ってふれずにアーム投げ、もしくは間違ったしなりのフォームを
体が覚えてしまう恐れがあるため注意が必要である。

まとめ

ハンドボールで腕をしならせて投げるメリットに3点あげられる。

  • シュート力の向上
  • ボールの出どころが見えづらくキーパーは止めづらい
  • シュートバリエーションが豊富になる

腕をしならせて投げるために重要となるのは

  • 肩関節が外側に回ること
  • 肩甲骨を寄せること
  • 胸を張ること

3つを全て意識しないと間違った腕のしなりとなり肩や肘のケガに
つながってしまうため、どれか1つでも意識が欠けたらだめだ。

ハンドボールで腕のしなりを習得するためのトレーニングで大事なのは
腕が思い切り振ること。至近距離での対面パスは全てバウンドパスで行うことで
正しいしなりのあるフォームを身に着けていくことだ。