ストリートスケートが好きな人たちへ
スケボーには大きく2つのジャンルがある。
オリンピックでもお馴染みのパークとストリートだ。
巨大なバーチカルを攻めるスケートが流行ったのは1984年。
この年Powellが出したThe Bones Brigade Video Show というスケートビデオは全世界のスケーターにボールとバーチの魅力を発信した。
このビデオをリリースしたPowell はブランド名はもちろん数々の有名選手を輩出しその名を世界に轟かせた。
80年代のスケートを席巻し、現在までのスケートカルチャーを築きあげた。
この作品はスケートビデオ史という意味でも最初の作品であり、今まで雑誌でしかプロの滑りを見ることができなかったスケーターたちに映像でのHOWTOが広がり、世界のスケーターたちのレベルが上がったのもこの頃からである。
しかし、スケボーのストリート文化と滑りは、パークスケートが流行った中でも永遠に廃れることはなかったのだろう。
夜の繁華街をフルプッシュしスポットを見つけてはカーブトリックをキメることこそスケボーの醍醐味だと考えるスケーターは根強く存在する。
平成生まれの子たちの中にはランプは一切やらずにストリートセクションだけを極めようとする人も少なくない。
私はスケボーの全てが好きなのでパークもストリートも、フィルマーもしているが1番スケートで楽しいと感じるのはストリートで得意なカーブトリックをキめ、仲間内で盛り上がる瞬間だ。
今回は本当の意味で上手いと思われるスケーターと、技数だけ多いが精度がよくなく初心者と見られがちなスケーターの違いとは何なのかについて書いていこうと思う。
グラインド系トリックを流せるスケーターの特徴
スミスグラインドやテールスライドができるけど、全然流せないから見栄えしない。
このような悩みに陥るスケーターに多いのは、オーリーtoマニュアルが不得意で距離が出せないスケーターに多い。
スミスやフィーブル、テールスライドの幹になるトリックは5-Oグラインド(ファイブオーグラインド)だと言われることがある。
私も初めてスミスグラインドを練習した際、「5-Oの重心にすればできるよ」と言われたことがある。
練習すればメイクすることはできるのだが、全くと言っていいほど流れない。
スミスグラインドというトリック名の技なのに、グラインドを全くさせられないということほどスケッチーな話はない。
自分とグラインドが流せる人の違いがなんなのか、もっと基礎的な部分で探してみることにしたところ5-Oの精度が違うことに気がついた。
テールマニュアルこそがグラインドの幹
スケボートリックのベーシックもベーシック、それがテールマニュアルだ。
やり方や、テールマニュアル自体のコツは他のHOWTO動画などを参考にしてもらいたい。
ここではテールマニュアルがなぜグラインドトリックを流せることにつながるのかと、グラインドトリックを流しているときの感覚的な部分を伝えていこうと思う。
ではテールマニュアルが得意な人間の5-Oと自分の違いとはなんだったのか。
答えは単純でテールが浮いてるか、浮いてないか。
5-OはテールがついていてもOKと言われているがマニュアルと同じように5-Oができるのと、そうでないのとでは雲泥の差なのだ。
テールを浮かせた5-Oの重心はマニュアルと同じだ。
テール足を踏み、矢印の方向に上がっているノーズが上がりすぎないようにコントロールする。
これを、例えばスミスグラインドやフィーブルグラインドに置き換えて考えてみてほしい。
繰り返しになるが5-Oは上がっているノーズをテール足で押さえ、その力加減と添え足でバランスを取っていた。
スミスやフィーブルは下がってきたノーズがそのまま下がり切らないようにテール足でバランスを取っている。
ただ、ノーズを下げるか上げるかの違いなのだ。
それではなぜこの重心だとグラインドトリックを流せるのか。
答えは簡単だ。
バランスを取っているのはもちろんなのだが、そのバランスを取りながらもテール足で進行方向にトラックを押していっているからだ。
そしてそれを後押しするようにテールマニュアルと同じで、ノーズをふむ力加減がわかっていればグラインドトリックはどんどん流れていく。
肝心なのはカーブにトラックをかけに行った時の重心がテールマニュアルと同じなのかどうかだ。
全く流れないスミスをするスケーターは、とりあえずスミスの形でカーブに入ろうとだけする。
少し頭を使えばわかるがグラインドの形だけ取ろうとして真上からかけにいっても流れるはずがない。
オーリーtoマニュアルと同じようにエントリーすれば必ず流れるはずだ。
スミスグラインドやフィーブルグラインドはノーズを下げたテールマニュアルだと考えてほしい。
あこがれのバックサイドテールスライドまで
スミスグラインドやフィーブルグラインドをストリートで流せるようになっていれば、それだけでも十分に「この人上手いな」と思われそうなものだが、カーブトリックの憧れであるテールスライドに挑戦するときもテールマニュアルを基礎とする考え方は役に立つ。
テールスライドなんてノーズスライドの逆でしょ程度にしか考えてないのなら、テールスライドを流すことなど一生無理だろう。
テールスライドをかけることはできるけど、ノーズが落ちてきて流せない。
ノーズスライドと根本的な違いは180をする人間の身体の構造上仕方のないことだ。
180はどうしてもノーズが先に落ちやすいのだ。
テールスライドはかかった時、180をしてかけているのだからノーズが下がってきて落ちてしまうのは普通なのだ。
ここで役に立つのがテールマニュアルの重心だ。
テールをかけた瞬間に下がってきたノーズが落ちないように重心をテールの上に持って行きマニュアルの姿勢をとればノーズから落ちることは減るだろう。
テールスライドに挑戦する前にハーフキャブtoテールマニュアルに挑戦してみてほしい。
ハーフキャブは180の一種なのだがフェイキートリックのためフラットだとテールが先に落ちるのだ。
ここでハーフキャブtoテールマニュアルがメイクできるならハーフキャブフロントテールスライドが簡単にメイクできるはずだ。
テールから落ちるからかけやすいし、マニュアルの重心さえできれば流すことも容易だ。
テールヒットさせるのが怖いならスラッピーのようにエントリーして流す感覚を掴むだけでも面白いだろう。
フロントテールの重心とハーフキャブテールの重心は同じなので簡単な方から挑戦してみてほしい。
ただしバックサイドテールスライドとなると、人によっては回しでカーブに入ることよりも苦戦する難易度のトリックだ。
スケボーで有名なYouTuberもメイクするのに10年かかったと紹介しているほどである。
考え方や重心の位置、メイクするのに必ず必要になってくる身体の使い方はここまで紹介したコツが必ず活きてくるのでぜひマニュアルの練習に励んでほしい。
マニュアルを極めるもう一つのメリット
ここまでオーリーtoマニュアルからつながるカーブトリックをいくつか紹介してきたが、マニュアルが得意になったら跳ねアウトもしっかりと意識してほしい。
跳ねアウトをしっかりとキメれると、当然スミスや5-O、テールスライドの跳ねアウトにもつながってくる。
オーリーtoマニュアルの抜け方とカーブトリックの跳ねアウトは一度ノーズにプレスをかける点で類似している。
回し技でカーブを抜けたい人は必須でメイクしておきたいスキルだ。
ここまでマニュアルが得意になることで中級者と初心者の分かれ目になることを紹介したが、オーリーtoマニュアルがまだできない初心者スケーターもこの記事を読んでいただいた方の中にはいるかもしれない。
そんな方は焦らずフラットでマニュアルでどこまで耐えれるかを練習すればいい。
練習と言ってもマニュアルはコン詰めてやっていては飽きる人もいるので、1日の練習の終わりにパークを一周して、他のスケーターに挨拶しながらストロークの長いフラットでマニュアルをしてみる程度でもいいのだ。
これを毎回の練習で続けていれば、いつのまにか「あれ?今日いつもより耐えれるな」と成長に気づきマニュアルの面白さに気づけるはずだ。
怪我のリスクもなく初心者から中級者、上級のトリックを練習している人ももう一度マニュアルという基礎トリックを極めてみると、上達の近道になるかもしれない。