卓球のラバーはたくさんの商品が各メーカーから販売されているが、
その1つに「粒高ラバー」がある。
主流で使われている裏ソフトラバーとは大きく違う特徴を持つラバーであり
現在は使っている選手がかなり少ないのが実情だ。
しかし、粒高ラバー特有の特徴をうまく活かすことで
個性的なプレーをすることも可能になる。

筆者自身10年ほどの卓球経験があり、実際に粒高ラバーを使っていた。
しかし、最初から粒高ラバーを使っていたわけではない。
5年くらいで粒高ラバーに変更したところ自分の性に合っており
それまでと違った楽しさで卓球をプレーできるようになった経験がある。
粒高ラバーについていろいろ調べたり、練習で新しいことを試してみたりして
卓球に楽しく向き合えるようになった。

現在の自分のプレーにおいて、何かを変えてみたり刺激を受けたりしたい人は
粒高ラバーをためしに使うことを考えてみてはどうだろうか。
粒高ラバーを使うことを検討している人に向けて
粒高ラバーの特徴や使い方そして向いているタイプの人について解説する。

卓球の粒高ラバーとは何か解説

卓球のラバーは、大きく分けると裏ソフト・表ソフト・粒高・アンチソフトの4種類がある。
まず、粒高ラバーの特徴やメリット・デメリットについて簡単に説明する
裏ソフトラバーとは全く異なる特徴を持つラバーのため、その特殊な部分をしっかり覚えてもらいたい。

粒高ラバーの特徴

粒高ラバーは、表ソフトのように粒が表面に出ているラバーだが、粒の形状が細長いのが特徴だ。
この細長い粒がボールをミートした時に倒れることで、相手が打ってきた球の回転をそのまま逆にして返球できる。
基本的な傾向として、上回転のボールは下回転になり、下回転のボールは上回転になって返っていく。
また、粒の倒れ方や倒れる度合いによってボールとの接触面が変わるために、球質や回転の変化の幅がとても大きくなる。
無回転のナックルボールからものすごく切れたカットボールまで、出せる回転量の幅が最も大きいラバーが粒高ラバーだ。

粒高ラバーのメリットとデメリット

粒高ラバーのメリットは、回転を逆にしたり無回転にしたりなど変化の大きい変則的なボールを出せることだ。
裏ソフトや表ソフトでは決してできない変化の大きさで返球できるため、その変化で相手のミスを誘って得点につなげやすい。
特に、粒高ラバーはナックルボールが圧倒的に出しやすいメリットがあり、粒高特有のナックルボールは慣れていない人にとっては打ち返すのがとても難しくミスをしてしまいやすい。
また、粒高ラバーは相手の球の回転に影響されにくいので、守備が圧倒的にやりやすくブロックやカットに適している。

相手の球の回転に影響されにくい反面、粒高ラバーは自分から回転をかけることがとても難しいデメリットがある。
基本的には、相手のかけた回転を利用することになるので、逆にナックルボールが返しにくく弱点になりやすい。
また、裏ソフトや表ソフトと比較してスピードが出にくく、回転をかけにくいことと合わせて自分から攻撃的な球を打つのが難しくなっている。
ただ漫然と返すだけでなく、低い弾道でコースを厳しく狙うとか、ときどきは表ソフトラバーのようなある程度の強打をすることも必要だ。
さらに、粒高ラバーはボールを打った時に表面の粒が倒れて変形する特徴があり、この特徴が安定性に欠けるデメリットにつながってしまう。
粒のちょっとした倒れ方の違いでボールの飛び方が大きく変わるので、自分でも不可解なミスが出てしまうことが珍しくないのも粒高ラバーの大きな特徴でありデメリットだ。

粒高ラバーを使った戦術タイプ

粒高ラバーを使った戦術タイプ

粒高ラバーを使う戦術のタイプを解説する。
選んでほしい 同じ粒高ラバーを使う戦術でもそれぞれ異なる特徴があるので、個人に合ったプレースタイルを。

カットマン

粒高ラバーを使う戦術で、最も多いのがカットマンだ。
台から離れた位置で相手の打ってくる球を基本的にすべてカットで返球し、相手のミスを誘う戦術になる。
もちろん、ボールが高く返ってくるなど、チャンスがあれば自分からスマッシュなどの攻撃をすることもある。
シェークハンドラケットに、裏ソフトラバーと粒高ラバーの組み合わせが一般的だが、両面とも裏ソフトや表ソフトとの組み合わせの選手もいる。
ただ、上回転のドライブをカットで下回転にして返球するのは、粒高ラバーが圧倒的にやりやすく、粒高のメリットを大きく活かした戦術だ。
どちらかと言えばヨーロッパの選手で多く見られる戦術だが、日本人の選手にもカットマンは何人もいる。
日本の歴代トップ選手で、粒高ラバーを使っていた有名な日本人のカットマンと言えば、1990年代に活躍した松下浩二選手だ。
世界卓球選手権でメダルを獲得したりオリンピックに出場したりなど、数多くの戦績を残している。

異質攻撃型

カットマンと同じく、シェークハンドに裏ソフトと粒高を組み合わせるが、カットではなく攻撃的なプレーをするのが異質攻撃型である。
裏ソフトでドライブや強打をしたり、粒高ラバーで変化の大きいボールを打ったりして、攻撃と相手のミスの両方で得点を重ねていく戦術になる。
攻撃と変化の両方を兼ね備えたプレースタイルだ。
伊藤美誠選手のように裏ソフトと表ソフトの組み合わせの異質攻撃型の選手もいるが、粒高ラバーを組み合わせた場合は変化の幅がさらに大きくなる。

前陣攻守型

シェークハンドラケットではなく、中国式ペンホルダーや反転式ペンホルダーに裏ソフト(または表ソフト)と粒高の組み合わせを使うのが前陣攻守型である。
基本的には、台に近づいた前陣の位置で粒高ラバーを使いずっと返球し続け、相手のミスを誘うプレースタイルになる。
ただし、ある程度のレベルの相手にはミスを待つだけで勝つのは難しく、コースを厳しく突いたり台上で2バウンドするほど短く返球したりして、相手を揺さぶる工夫が必要だ。
また、ときにはプッシュやミート打ちなど自分から強打して攻撃することも必要になる。
以前は、海津富美代選手など国内でもトップ選手がいたが、現在では世界でもほとんど見かけない戦術になってきている。
ただ、ルクセンブルク代表のニー・シャーリエン選手が2021年開催の東京オリンピックや世界卓球選手権に出場するなど、まだまだ世界で戦うことができる戦術だ。

粒高ラバーを使う戦術が向いている人のタイプ

粒高ラバーを使う戦術が向いている人のタイプ

粒高ラバーを使う戦術について解説したが、誰でも簡単に習得できるわけではない。
特殊な特徴を持つ粒高ラバーの戦術のため、挫折するリスクももちろんある。
各個人の性格やタイプで向き不向きがあるので、どのような人が向いているのかを解説する。

保守的や内向的な性格の人

粒高ラバーを使う戦術は基本的に守備的なプレーが多くなるので、保守的な人や内向的な性格の人に向いている。
守備で長いラリーを続けるプレー内容になるため、逆にせっかちな人には向いていない。
自分からなかなか攻撃していけず、つなげていくプレーになりがちな人は粒高ラバーを試してみることをおすすめする。

手先が器用な人

手元を見ずにラケットをくるくると回転させるテクニックが粒高ラバーを使うには必須なので、粒高ラバーを使う戦術は手先の器用な人に向いている。
粒高ラバーを使う選手は、裏ソフトラバーなど別の種類のラバーとの組み合わせにするが、プレー中にラケットを反転させる必要が出てくる。
ペンホルダーラケットの前陣攻守型は、サーブを裏ソフトで出した後にラケットを回転させ、その後は粒高ラバーで返球していく。
シェークハンドラケットのカットマンや異質攻撃型は、ラリー中にラケットを反転させてフォア面とバック面のラバーの種類を変えて打つことで相手を惑わせる。
手先がそれほど器用でなくても練習次第で反転できるようにはなるが、コースを突いたり緩急をつけたりするのも必要なため器用な人のほうがやはり向いている。
また、裏ソフトや表ソフトと同じ打ち方ではまともに返すことができないので、粒高での打ち方も習得しなければならない。
異なる打ち方をきちんと習得し、打ち分けられる器用さも必要だ。

調べたり研究したりすることが好きな人

粒高ラバーは使う選手の数が少ないため、自分自身で戦術や扱い方を会得していく必要がある。
粒高ラバーについて書かれている専門書を読んだり、実際に粒高ラバーを使う選手の試合動画を見たりして、打ち方などを自分で学んでいく姿勢が重要だ。
自分1人ですすんで調べて学ぶことが好きな人に向いている。

頭の回転が早い理論派の人

粒高ラバーでの戦い方はボールの変化や守備はもちろん、厳しいコースを突いたり緩急をつけたりしてミスを誘う戦術なので、パワーよりも技術でのプレーになる。
ラリー中に、コースなど細かい部分をとっさに考えたり判断したりするので、頭の回転が早い人や理論派の人のほうが向いている。
もちろん、ドライブ主戦の選手も攻撃をするタイミングやつなげる判断などは必要だ。
しかし、粒高ラバーでは球質やコースなど考える部分が細かく、何よりプレーが長くなりがちなので考える機会も多くなってくる。
そのため、判断する場面が多くなりがちで、判断ミスによる失点を減らすためにも頭の回転が早い理論派向きと言える。
先ほど述べたように、調べたり研究したりすることも必要なので、その点でも理論派の人のほうが向いている。

1人や孤独が苦にならない人

粒高ラバーを使う戦術は、一般的なドライブを多用するプレースタイルとは全く性質の違うものであり、いろいろな意味で一匹狼になってしまうことも珍しくない。
粒高ラバーを使う人がそもそも少数派のため、相談したり教えてもらえたりする機会にほとんど恵まれない。
自分1人でいろいろ調べたり勉強したりしながら練習で試し、孤独にコツコツ積み上げて上達することになる。
1人や孤独が苦になる人は、粒高ラバーを使う戦術は技術面よりも環境面で挫折しやすいとも言える。
また、ストップでのネットインや、コースを突いた際のエッジボールでの得点がどうしても出てくるが、それを気にせずに割り切ってプレーしないといけない。
多くの面で、粒高ラバーを使う戦術の選手は耐えたり割り切ったりする場面が出てくることは覚えておこう。
ただ、それでも粒高ラバーの奥深さに気づけば、楽しさのほうが上回るはずだ。

粒高ラバーで卓球の新たな楽しさを感じられる

粒高ラバーで卓球の新たな楽しさを感じられる

粒高ラバーの特徴や戦術、向いている人のタイプについて解説した。
粒高は、ほかのラバーにはない特徴が多くあって、最初は使いこなすのに苦労するかもしれない。
しかし、使いこなせれば個性のあるオンリーワンのプレーもできる。
裏ソフトや表ソフトでの戦い方にマンネリを感じていたり、プレーの幅を広げてみたりしたい人は、粒高ラバーをためしてみることをおすすめする。
粒高ラバーに変えることで、卓球の練習や試合に新たな楽しさを見つけられることがある。
特に、粒高ラバーを使う戦術が向いているタイプの人であれば、ぜひ検討してみてほしい。