総務省が行っている「令和3年度社会基本調査」に、
「過去1年間に行ったスポーツ(行動者率:10 歳以上人口に占める行動者数の割合)」という調査項目がある。

1位がダントツで「ウォーキング・軽い体操」、
その後「ジョギング」「つり」「登山・ハイキング」などが続く中、「ゴルフ」「野球」に次いで、
全体の9番目に「バドミントン」がある。

「バドミントン」は「卓球」「サッカー」「バスケットボール」「バレーボール」などのメジャー種目を上回っており、
いかに多くの方に愛好されているかを示す、わかりやすいデータだ。

そんな多くの方に親しまれているバドミントンだが、
趣味として続ける方は、ほとんどの方がダブルスをメインに楽しまれている。

これは、ダブルスが1人の受け持つスペースが小さく、
なじみやすい上、ラリーも早く、バドミントンの面白さが詰まっていることがある。

そんなこともあって、ダブルスにハマっていくのだが
「ダブルス独特の動き方がわからない」「レシーブを奥まで飛ばせない」あるいは
「パートナーとの関係性、役割分担」など、特にバドミントン競技歴が短く、
上達過程にある方から疑問や悩みをお聞きすることがある。

今回は、そんな皆さんへ、社会人になってバドミントンを始め33年、
レベルはピーク時で地域の一般社会人中級クラス上位、
県民体育大会地域代表歴のある私が、自身の経験から3つに分け「ダブルスのツボ」を解説していく。

あくまで、自身の経験に基づく主観的なものなので、
その点はご容赦願いたい。

ダブルスの動きを効果的でスムーズにするには

基本的なフォーメーションの考え方、シンプルなフォーメーション選択の判断基準

ダブルスには、守りのフォーメーションで、
パートナー同士の位置関係が横並びの「サイド・バイ・サイド」と、
攻撃のフォーメーションで、縦関係の「トップ&バック」があることは、
競技を始めた方ならおわかりだろう。

また、レベルを上げるために、
攻撃型の「トップ&バック」の重要性が増すことは言うまでもない。

問題なのは、瞬時に2つのフォーメーションを変更しなければならないことだ。
しかし、ダブルスの動き方には、
基本的な考え方はあるものの、
自身のレベル、パートナーのレベル、
得意不得意、右利きか左利きか、などにより実際は一様ではなく、
戸惑う方が多い。

まず、理解しなければならない最もシンプルな基準は、
『相手がスマッシュなどの攻撃的ショットを打てる体勢であれば「サイド・バイ・サイド」、
それ以外は「トップ&バック」でいい』ということだ。

言い換えれば、
相手にスマッシュなど攻撃の選択肢がないのに、
守りのフォーメーションである「サイド・バイ・サイド」で構えていても
意味はないのだ。

「トップ&バック」に移行するタイミングが重要。

次の段階として、「フォーメーション選択基準は理解しているが、 うまく動けない。」という方も多いだろう。

特に難しいのは「サイド・バイ・サイド」から「トップ&バック」への移行だ。 守備型の「サイド・バイ・サイド」は役割分担がハッキリしており、 クリアやロビングなど、つなぎの返球をしてからフォーメーションを整えればよく、 難易度は高くない。

一方、「トップ&バック」に移行するのは、 ペアのタイミングがずれると、相手に狙い目のスペースを与え、逆効果だ。 そのため、初級から中級レベルを目指しているプレーヤーや、 攻撃力が男性に比べ低いレディースのプレーヤーなどは、 どうしても守備が気になり、「サイド・バイ・サイド偏重」になりやすい。

ではどうするのか。 理解しなければならないのは、 自分やパートナーが打ったショットによって、 次に相手が打つショットの範囲が決まり、 自分たちの次のフォーメーションも決まるということだ。

文字にしてみると、当たり前のことだが、 実際の場面では「相手に返球する」ことに追われ、 その1歩先2歩先を想像できていない。

一番大切なのは、どんな時も一歩先を想像し、「意図的に」「狙って」ショットを打つこと。 「トップ&バック」に移行する際も、 その直前に意図的に攻守を切り替えるショットを打ち、 また、それをパートナーも理解していることである。

意図的に打つことができ、 パートナーもその意図を理解していれば、 そのままスムーズなフォーメーションの移行が可能となる。

どのようなショットが効果的なのかは、 次の「相手が嫌がるレシーブは」で具体的に話すこととするが、 相手が次のショットとして、 アンダーハンドやバックハンドなど、 守備的なショットを選択せざるを得ない状況を作る必要がある。

相手が嫌がる効果的なレシーブは

「レシーブを奥まで飛ばせない」ことに悩む必要はない。

よくお聞きする悩みの一つとして、「スマッシュを打たれた際のロングレシーブを奥まで打てない」ということがある。 私もバドミントンを始めた当初、バックハンドのロングレシーブが苦手だったが、練習を繰り返し、距離を出せるようになった。

ところが試合になると、かえって結果が悪くなった。 原因は、ラリー時にロングレシーブの選択が増え、攻守の切り替えができず、守勢に回ってしまうことだった。

要は「相手は何を嫌がるのか」を考えないと、自分のショット技術を上げるだけでは試合には勝てないということだ。

相手が嫌がるのは、連続攻撃ができないレシーブを打たれること。

では、どんなレシーブが必要なのか。
それは、スマッシュを打った相手プレーヤーの足元やハーフコートを、
ドライブ気味に狙うレシーブや、意表を突いてネット前などに返球し、相手にロブを上げさせるショットだ。
これは、前章で述べた「サイド・バイ・サイド」から「トップ&バック」へ移行する
「意図的に攻守を切り替えるショット」であり、「相手が嫌がるレシーブ」でもあるのだ。
もちろん、相手前衛に触らせないよう、相手のポジションをよく見て、
ネットから浮かないように打たなければならない。

しかし、技術的にはラケット面をしっかり作ってコンパクトに対応すればよく、
相手のスマッシュの勢いも逆利用できるので、レディースのプレーヤーなどにも有用だ。
実際、中級クラス以上のレディースプレーヤーの多くは、こういった、
攻守を入れ替えるレシーブの技術に優れている。

つまり、前出の「スマッシュを打たれた際のロングレシーブを奥まで打てない」という悩みに対しては、
「奥まで返すことにこだわる必要はない。
むしろ、攻守が逆転するドライブ気味のレシーブを磨いた方がよい」との回答になる。

2人で戦うダブルスの特性を理解する

最後は、最も大切なダブルスの特性をお話ししたい。
付け加えるなら、この話はバドミントンだけでなく、
テニス、卓球などのダブルスその他、「二人で組んでやる種目」全般に通じることでもある。

コートの中ではパートナーとの兼ね合いがある。

まずフォーメーションの選択に関して
これまで述べた基準さえ理解していればいいように感じるが、
厄介なのは、パートナーの力量、得意不得意、好み次第で、
ペア同士の選択がバラついてしまうことだ。

ペアの一人だけが「トップ&バック」に移行しようとしても、
もう一人が「サイド・バイ・サイド」の位置取りを続ければ、
フォーメーションは穴ができる。

また、攻撃のフォーメーションである「トップ&バック」に移行したのに、
パートナーの次のショット選択が攻撃を意図したショットでないと、
また動き直しになってしまう。

なぜ、このような事象が起こるのか。
パートナーに意図が伝わっていない場合もあるが、
パートナーが守備に自信があり「サイド・バイ・サイド」を好んでいるのかもしれないし、
あるいは「トップ&バック」に苦手意識(例えば、前衛のプレーが不得意、
後衛でのスマッシュに自信がないなど)があるのかもしれない。

要は自分にとって最善の選択であっても、
パートナーにとってはそうでない時があるということだ。

ダブルスは2人で組むものである以上、
2人の連係がパフォーマンスに大きな影響を与える。
お互いにやりたいプレーだけやっていれば、
ダブルスとしてはかみ合わない。

「1+1=3」にするためには。

大事なことは、パートナーの長所を引き出しながら
ダブルスとしてのパフォーマンスを最大にすることだ。

まず、自分の得意なショットは何か。
自分は攻撃型なのか守備型なのか、前衛タイプなのか後衛タイプなのか。
次にパートナーはどうなのか、パートナーの好むスタイルは何か。
それを理解した上で、ダブルスペアとして、どのような戦い方に強みがあるのか。
自分たちの強いフォーメーションに移行するためには、どんなショットが必要か。
「頭でっかち」になりすぎるのは良くないが、何気なく練習するだけでなく、
時にはロジックを入れて考えることも必要だ。

ここからは、15年以上同一のパートナーと組んで「1+1=3」になった、
私の体験談をお話ししたい。

私はバドミントンを始めた当初、パートナーを固定せず試合に出ていたが、
パートナーに色んなことを求めすぎるきらいがあった。

そんな時に出会ったのが、左利きで自分より経験が長く、
レベルは自分より上、年も7つ上のパートナーだった。

自分が前衛型なのに対し、パートナーは後衛型、
動きは私の方が早く、一つひとつのショットスキルはパートナーが私よりも高かった。

パートナーが左利きだったため、最初は戸惑うことも多かったが、
互いに長所・短所を理解し、動き方をすり合わせる中で、
ダブルスとして機能していくのが、手に取るようにわかった。

パートナーが後衛型だったこともあり、
自分が好守を入れ替えるショットを繰り出し、
パートナーが後衛でスマッシュ、私が前衛で決めるというパターンが得意だった。

長く組むことで、さらに連携が深まり、
私が常時出場していた地域の試合で、
当初は初級クラスだったものが、最終的には中級クラスも決勝までコマを進められるレベルに到達した。

ただ、私のように最適なパートナーと出会えるのは、かなり幸運なケースといえる。
普段の練習時もパートナーは様々であろう。
そんな時はどうすればいいのか。

まずは、自分よりパートナーのレベルが高いと思えば、
細かい点はパートナーに任せ、思い切って自分を出してみる。
自分の方がパートナーよりうまいと思ったら、
パートナーをカバーする気持ちで相手に合わせてみる。
パートナーのことを考えながらプレーする癖をつけ、
自分のプレーは客観視して、ダブルスを見てみるのだ。

結果が悪い時にパートナーに責任転嫁しがちだが、
実はダブルスをやっていて一番見えにくいのは、自分のプレーである。
(特に試合を映像で確認してみると、試合時に感じた自分のイメージと違うものが映っていることが多いものだ。)

そこを理解することが、ダブルスの上達には欠かせない。

また、試合で結果を出したい方は、
頻繁にパートナーを変えるのではなく、
一定期間固定し、まずはダブルスとしての「成熟度」を高めてみてはどうか。
長く組んで互いの長所を引き出し合えれば、
思った以上の「プラスアルファ」があるものだ。

最後に

以上、ダブルスに関する「ツボ」について、個人的な経験を踏まえてお話ししてきた。

必ずしもすべての方に当てはまるとは思わないが、
ここまで話したことを念頭に置いて、普段の練習に取り組んでもらいたい。
ダブルスにはバドミントンの面白さが詰まっている。
このコラムをお読みいただいた皆さんに、
私のように少しでも長く、バドミントンを楽しんでいただきたいと心から願っている。