この記事では、私自身の経験からお伝えしたいトスを上げるときのコツを紹介する。 私は高校からバレーをはじめ、大学までプレーをしていた。 強豪校ではなかったが、レギュラーとして試合に参加し、ポジションはセンターだった。 実戦の中では、セッターがトスをあげられないことも多々ある。 センターとして中央付近にいることが多い私は、トスを上げることも多くあった。 最初はトスが思うように上がらず、苦労することもあったが、経験を積む中で徐々に上達していった。 そんな経験の中からの情報として、読んでいただけると嬉しい。 教科書的なトスの上げ方ではなく、一プレーヤーとしての経験からの情報として、参考になれば幸いだ。
トスを上げるときの基本姿勢
トスを上げる際には、まず力を抜いて立った状態から手を頭上に上げる。そのあと、適度に肘を曲げて、手を額の前で構える。両手の人差し指と親指で三角形を作り、ボール半個分程度離した状態にすると、適切な手の形になる。体幹は、背筋が曲がって猫背にならないように注意し、股関節から軽く曲げ、軽度の前傾姿勢となる。膝を軽く曲げた状態でクッション性を持たせて、全身が、硬くならないように適度に脱力する。顔は正面を向き、ボールの動向に反応できるようにしておく。この状態を基本姿勢として、動作の中で崩れないように意識する。私はこの基本姿勢がもっともボールに反応しやすく、きれいなトスを上げるのに役立った。
体の使い方のコツ
トスを上げるときのコツとして、第一に挙げられるのは、全身の力を適度に抜いて構えるということだ。私の場合、自分の体をバネに見立てて頭の中でイメージをすることで、適度な脱力が維持できていた。適度な脱力は構えからボールを受けるまで続ける。そして、ボールが自分の手の中に入って、初めて全身の力を解放する。具体的には、全身を適度に脱力した状態で、ボールの衝撃を吸収し、少し体を屈めたところから、一気にボールへ力を伝える。まるで、バネがボールの衝撃を受けて、縮んだのちに、反発して伸びあがるようなイメージでトスを行う。自分の体をうまく使おうと思ったときに、頭の中で練り上げるイメージはとても大事な意味を持つ。私の場合、トスを上げるときには、適度な脱力と緊張をもったバネのイメージを作ることで、きれいなトスを上げやすくなった。
2つめのコツは、指先を柔軟に使うこと。指先はトスを上げるときに、必ずボールに触れる部位である。また、指先は人体の中でも神経線維の密度が高く、とても繊細な動きができる部位でもある。この指先の使いかたを柔軟にすることで、きれいなトスを上げることができる。イメージとしては、ボールが両手の人差し指と親指で作った三角形に少しめり込んだあとに、その反動でトスを上げる感じ。トスを上げる際には、ボールが指に触れたら指を開きながら上げると、きれいなトスを上げやすい。自分をバネに見立て、バネの反動でトスを上げるというイメージを成立させるためには、日々の練習で指の柔軟性を上げる意識が必要だ。
3つめのコツは、トスを上げるときには、手首を少し反らし気味にするということ。手を額の前で構えて、ボールが手に収まると同時くらいに、指先の動きと連動して手首を反らすイメージ。この動きは、私が練習の中で無意識に体得した動作になる。自分に向かってきたボールに対して、少し逆回転をかけるようなイメージでトスを上げると、きれいにトスが上がりやすい。膝のクッションや肘の伸びなど、様々な部位の動作が連動してトスを上げるわけだが、ここまでに書いた3つのコツは私自身の経験から、かなり重要だと考えている。
きれいなトスを上げるための練習方法
きれいなトスを上げるための練習をする際には、まずは寝転んだ状態でのトスをオススメする。具体的な方法としては、上を向いた状態で寝ころび、腕と手先で真上にトスを上げる練習をするとよい。寝ころぶことで腕と手先以外は固定され、トスでボールを運ぶ上で主な役割を果たす腕と手先の動作を集中して練習することができる。変な力が入ると、ボールは真上に上がらずうまくいかない。ボールが逸れてしまうと、寝ころんだ状態なので当然手が届かないため、失敗がわかりやすい。この練習では、指先にボールが収まり、指が少しボールに押し込まれた感覚があってからトスを上げるとうまくいくことが多かった。トスを上げる動作の開始は自分で少し遅いかな?と思うくらいがちょうどよいのだが、この練習はその感覚を掴むのに適している。また、この練習のもう1つのよいところは、ある程度のスペースがあれば場所を選ばずにどこでもできるということ。ボールさえあれば、自宅の部屋で天井に向かってボールをトスすることもできる。とにかく、練習の頻度を増やして、腕と指先にボールを扱うことを慣れさせるとよい。
寝ころんだ状態でのトスがうまくいくようになったら、次のステップとして、立った状態でのトスを重点的に練習するとよい。立った状態では、腕や手先だけでなく、膝や腰の動作も必要になってくる。下半身から腰、上半身、腕、手先という力の流れを意識して、一本一本トスを上げることが練習になる。この練習では、動作の起点となる足からの力を意識することでうまくいくことが多かった。立った状態からトスを上げる実際の練習場面では、目標物を決めて、そこにボールを飛ばす練習をするとよい。対人でトスを上げる練習をすることもあると思うが、その場合も自分トスがきちんと目標とした場所に上げられたか意識をすることが大切である。うまくいった場合の感覚はしっかりと覚えておき、うまくいかなかった場合は何がよくなかったのか、考える時間を設けると、動作の習得効率が上がる。
寝ころんだ状態でのトスと、立った状態でのトス、両方の練習で概ね思い通りの場所にトスが上げられるようになれば、今度は動きの中でトスを上げる練習をする。その際は、前述までの体の使い方だけでなく、ボールの落下地点にいち早く入り込むことを意識するとよいだろう。